未来に伝えるべき“物語”を求めて 円城塔 長尾真 第1弾【1】  Web上でものを読むことに対して違和感がなくなってきた、そう感じている方も多いのではないでしょうか。弊誌がいい例ですが、ここ二、三年で、「情報」のみならず広く「作品」もオンライン上で発表、発信される機会がぐんと増えました。
 この流れはこの先どんな未来につながっているのだろう……そんなことを思うと同時に、こうして生み出されていくデジタルコンテンツはどう“残して”いくことができるのか。さらには、既存の「情報」や「知的財産」はどう保管し活用していくことができるのか。
 まずは、私たち自身がこの問題の当事者として、未来のあり方を考えたい。そのヒントとなるよう、この連載では日本最大の「図書館」であり「知的財産の保有所」でもある国立国会図書館の館長である長尾真さんによる連続対談を掲載していきます。  
 対談は、国会図書館の職員である倉重卓也さんと「コミュニケーションの可能性―現実の拡張」としての空間デザインを手がける李明喜さんにより企画され(※司会も李氏)、2009年2月から12月にかけて4人のゲストをお招きし行われたものを、今回あらためて再構成したものです。
 第1回目のゲストは、作家の円城塔さん。情報工学者としてのご経験を活かし、今日的な電子図書館の実現に向けて取り組む長尾さんと、同じく物理的なアプローチで「言語」や「物語生成システム」というものと向き合い、その後作家となった円城さんの、刺激的かつ示唆に富んだ対話をどうぞお楽しみください。




*国立国会図書館とは?

「真理がわれらを自由にする」という前文を掲げ1948年に設立された。国会の立法活動を補佐する機関として、また、日本で唯一の国立図書館として機能。国内外の図書館と連携するとともに、納本図書館としてすべての政府刊行物・民間出版物を保存している。所蔵資料は約3600万点。 東京・永田町の東京本館をはじめ、国際子ども図書館(2000年開館・東京上野)、関西館(2002年開館・京都府精華町)の3つの施設をもつ。2002年ホームページでの情報提供を大幅拡大。2003年に遠隔利用サービスを開始。2007年に「知識がわれらを豊かにする-国立国会図書館60周年を迎えるにあたってのビジョン―」(長尾ビジョン)を公表。情報環境の変化の中で、蔵書のデジタル化や電子図書館機能に対応したサービスを展開している。

円城塔(えんじょう・とう)

1972年、北海道生まれ。作家。東北大学理学部物理学科卒、東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。06年『Self-Reference ENGINE』(現在ハヤカワ文庫)で第7回小松左京賞最終候補。07年『オブ・ザ・ベースボール』(文藝春秋)で文學界新人賞を受賞しデビュー。同作品で第137回芥川賞候補となる。2010年、『烏有此譚』(講談社)で第23回三島由紀夫賞候補、第32回野間文芸新人賞受賞。ほか著書に、『Boy’s Surface』『後藤さんのこと』(ともに早川書房)など。

長尾真(ながお・まこと)

1936年生まれ。京都大学工学部教授、京都大学総長、独立行政法人情報通信研究機構理事長を経て、2007年国立国会図書館長に就任。専門は、自然言語処理、画像処理、パターン認識、電子図書館など。2010年には『電子図書館 新装版』(岩波書店)、『情報を読む力、学問する心』(ミネルヴァ書房)と、共著で『書物と映像の未来――グーグル化する世界の知の課題とは』(岩波書店)、『ブックビジネス2.0』(実業之日本社)を刊行。ほか主な著書に『「わかる」とは何か』(岩波新書)など。

*著者より

 「巫山戯(ふざけ)ている」と「真面目」は多分両立することができまして、真面目に巫山戯るというのとはちょっと違います。真面目にやっているのに巫山戯たことになってしまう、巫山戯ているのに真面目なことになってしまう、どちらも大変よく起こったりするわけですが、基本的には不本意です。
 つまり何を言いたいのか申しますと、おまえは長尾さんに向かって何を言っているのかと、巫山戯ているのかとお怒りの向き、巫山戯ているのはこの世の法則のほうなのだと何卒御寛恕(かんじょ)頂ければと。(円城塔)


 コンピュータはどこまで人間の能力に近づいてゆくのだろう。
 介護ロボットなども実用に近づいているが、人の心を察し、適切に対応するロボットも不可能とは言えないだろう。しかし円城さんのように本当に創造的な著作物を作れるところまでゆくのかどうか、興味のあるところである。(長尾真)