小説にサウンドトラックはあり得るか 菊地成孔 第7回 水村美苗 第7回 姉妹が織り成す小宇宙、水村美苗『私小説 from left to right』

小説の記憶が求める音を掬い上げ、想像のなかで戯れるという至福の試み、第7回。
ほかに何も必要としないほど完成された小宇宙……水村美苗の『私小説 from left to right』。
果たしてこの作品に寄り添える音は存在するのか?


『私小説 from left to right』(水村美苗)
1992年より『批評空間』(福武書店、のち太田出版発行)にて「日本近代文学 私小説 from left to right」の題で連載され、95年に新潮社より単行本として刊行された。同年、野間文芸新人賞を受賞。水村氏は東京で生まれ、12歳のときに渡米。イェール大学にてフランス文学を専攻。のち、プリンストン大学などで日本近代文学を教える。デビュー作は90年刊行の『続明暗』。02年には『本格小説』で読売文学賞を、09年には『日本語が滅びるとき――英語の世紀の中で』で小林秀雄賞を受賞した。




『Piano & String Quartet』(モートン・フェルドマン)
85年に作曲されたピアノと弦楽四重奏曲。演奏は、高橋アキ & Kronos Quartet。モートン・フェルドマンは、29年に生まれ、87年に亡くなるまでNYを中心に活躍した作曲家。現代音楽家ジョン・ケージとも親しく、ふたりは相互に影響を与え合った。


菊地成孔(きくち・なるよし)

1963年、千葉県生まれ。音楽家、音楽講師、文筆家。84年にプロデビュー。その後、デートコースペンタゴン・ロイヤルガーデン、SPANK HAPPYなどのグループを主宰、現在は菊地成孔ダブ・セクステット、菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラールで活動中。著作デビューは03年『スペインの宇宙食』(現在小学館文庫)から。対象は音楽、映画、料理、服飾、格闘技と幅広い。 近著に『ユングのサウンドトラック』(イースト・プレス)、大谷能生との共著で『東京大学のアルバート・アイラー』(文春文庫)、『アフロ・ディズニー』(文藝春秋)など。
2010年9月には『アフロ・ディズニー2 MJ没後の世界』と、菊地成孔の00年代の音楽家としてのベストワークス「闘争のエチカ」(上下)も発売になった。