小池みき&牧村朝子×山崎ナオコーラトークショー 小池みき 牧村朝子 山崎ナオコーラ 『同居人の美少女がレズビアンだった件。』刊行記念 小池みき&牧村朝子×山崎ナオコーラトークショー この度『同居人の美少女がレズビアンだった件。』刊行記念として、著者の小池みきさん、監修の牧村朝子さん、そして牧村さんが大ファンの、作家の山崎ナオコーラさんをお迎えし、吉祥寺パルコブックセンターにてトークショーが開催されました!  作品のこぼれ話だけでなく、お三人による「ここだけでしか聞けない」話が満載! お越しいただけなかった皆様のために、当日の様子を特別公開いたします。
この度『同居人の美少女がレズビアンだった件。』刊行記念として、著者の小池みきさん、監修の牧村朝子さん、そして牧村さんが大ファンの、作家の山崎ナオコーラさんをお迎えし、吉祥寺パルコブックセンターにてトークショーが開催されました! 作品のこぼれ話だけでなく、お三人による「ここだけでしか聞けない」話が満載! お越しいただけなかった皆様のために、当日の様子を特別公開いたします。


◎質問コーナー① 堂々巡りでぐるぐる悩んでしまう時の対処法!

小池:今日は参加者の皆様から事前に質問を募集していたので、時間のある限りそれにも回答していきたいと思っています。

牧村:たくさんの質問ありがとうございます!

小池:簡単なやつからいきましょうか。質問じゃなくて牧村へのリクエストだけど、「投げキッスしてください!」だって。じゃあ、君が投げキッスしてる間に次の質問選ぶよ。

牧村:(立ち上がって連続投げキッス)

会場:大拍手

小池:どれにしようかな……。

牧村:早く! アンタひっぱってるでしょ!





小池:んじゃあ二人への質問。「運命の人との出会い方を教えてください」。ナオコーラさん、いかがですか?

山崎:いや、私にはわかんないです(笑)。でもこのマンガの中で、牧村さんが、森ガさんに会う前に「今日運命の人と会う」って言っていましたよね。だから、言うのが大事なんじゃないかなって思いますけど。

牧村:その時なんか、“きてた”の。そういう時ってあると思うのよ。だからこの、おでこのね、第三の目を開けておくのが、秘訣かしら?

小池:えー、今日は別に、スピリチュアルな会ではございません。

会場:(笑)

山崎:「求めよされば与えられん」、とマンガにも描いてありましたけど、牧村さんは本当にそういう感じがしますね。

牧村:ナオコーラさんと対談したいっていう願いも叶いましたから! 言葉に出していくのって大事ね。

小池:では次、これは牧村にだね。「フランスは日本より同性愛に対して理解の進んでいる国だと思いますが、それでも困ったことはありましたか?」。

牧村:あります。フランスは制度としては整っていますけど、国民はそれぞれいろんな考えを持っているので、日本より同性愛への理解自体が進んでいるっていうわけではないと思うんですよ。具体的に困ったエピソードとしては、森ガと二人で歩いてる時に、知らない男の人に「お前ら今の時代でよかったな、2000年前だったら俺がお前らのこと殺してたよ」って言われたこととか……。

小池:ひえー。その時はどうしたの?

牧村:「今の時代でよかったな」って言われて、森ガがさわやかに「はい。よかったです!」って返してて、「かっこいいいいい(////)」って思った。

一同:(笑)

小池:いつものノロケいただきました。では次。「男、女という区分って何なのでしょうか? もし概念にすぎないとしても、同性愛や異性愛があるのはどうしてでしょうか?」。ふむ、どうですかね。

山崎:うーん、難しい質問ですね……。ちょっと話がズレるかもしれないですが、さっき牧村さんが仰っていたことを思い出しました。男女の恋愛話ばかりで、子どもの頃は辛かったっていう。私は小説家として、性別や性指向への主張は特にないつもりで作品を書いていますけど、性別の表現をしたり、それを使ってキャラクターを動かしたりするだけで、誰かが傷つく可能性もあるんだな、って思うんです。「女と男がくっついて……」というようなことが書かれた本ばかりになったら、「それが普通なんだ」っていう主張になってしまうし、そういう社会を作る要因になってしまうから、気をつけなきゃいけないと思いました。

小池:牧村は?

牧村:「男」「女」という区分がある理由は、さっきも出た、書店の棚の話と同じだと思います。それがあると便利だと思っている人がいる、あるいは便利な場合もある、ってこと。「女性は市役所で無料の乳がん検診が受けられますよ」とか、「男性の方はこういう疾患にかかりやすいという統計が出ているので気をつけてください」とか、社会の管理のためには便利ですよね。あとは、「男心のつかみ方」っていう記事を読めば、「男心」というものが具体的にあって、歩みよって行ける気がしてくる。それも一種の便利さ。ただ、便利なだけがいいことじゃない、ってことは覚えておきたいわよね。

小池:なるほど。あ、これは私宛てだ。「みきさんはヘテロセクシュアルだそうですが、もし自分好みの女の子にせまられたらどうしますか?」。

牧村:どうする~~?(小池の腕をなで回す)

小池:あの、うちアイロン台は間に合ってるんで。(※フランスの俗語で、貧乳は「アイロン台」)

牧村:~~~っ(怒)!

小池:どうなんだろう。好みの女の子っていうのが思いつかないけど。でも、一緒に生きていきたいと思うぐらい素晴らしい女の子が相手だったらつき合うかもしれないですよね。

牧村:よろしく!

小池:よろしくされても! では次。「女の子を好きになってしまい、その子がレズビアンかどうかもわからないのですが、どうやったら仲良くなれるかとても悩んでいます。告白もしたいのですが、勇気がありません」。だそうです。

牧村:わかる。勇気出ないわよね。見た目でレズビアンかどうかはわからないから。

山崎:異性の場合でもわからないですよね。その人がどんな人かって。好いてくれるのかわからなくても告白する、というのは異性相手ではよくあるじゃないですか。それとはまた違うんでしょうか?

牧村:根本は同じことですよね。ただ、実際問題考えてしまうのもわかります。男性が女性に、あるいは女性が男性に告白するときに、「相手はもしかしたら同性が好きかもしれない」って不安に思うことは比較的少ないと思うんですよ。

小池:逆に同性に告白するとなると、相手が「自分は同性が好きだ」って明言してでもいない限り、「異性の方が好きな可能性」は考えざるを得ないよね。

牧村:だから私も、「かまをかける」ようなことはよくしていました。例えばちょっと昔の作品ですけど、女性の同性愛を扱った「Lの世界」っていうドラマの話題をふって反応を見る、とか。かまをかけろ、って言うわけじゃないですよ。でも、そういう話題について話すことで、相手が例えば同性愛なり何なりに対して、ものすごく強い嫌悪感を持っているわけではない、ってことはわかったりします。

山崎:告白することで傷つけられそうな場合は、しないほうがいいかもしれないですものね。

牧村:そう思います。告白って、言葉以外の部分で伝わることも多いですよね。「あなたのことが好きです。つき合って下さい」って言った瞬間、相手がそこに「あなたとセックスしたいです」、という意味を感じる場合も往々にしてある。相手がそういう一種の「エグさ」だけにフォーカスしなくていいような信頼関係ができあがったときが想いを伝えるタイミングかなと思いますし、だからまずは人間同士としての信頼関係を作るのが大切かなって。いずれにしても、その人を好き、っていう気持ちを楽しんでほしいです。楽しもうと思えば楽しめるものだから、恋って。

小池:では次の質問。「ずっと小さい時から、ナオコーラさんの著書『私の中の男の子』の主人公・雪村のような性別違和がありました。女湯に入る時の孤独感、生理への嫌悪感、自分の性別を見てみぬふりをしたくなる気持ちなどが、皆と違う感覚だと気づいたのは最近のことです。それを自分でどう飲み込んでいけばいいのかわからなくて悩んでいます」とのことです。ナオコーラさん、どうでしょうか。

山崎:私もそういう感覚で、そういう悩みを持ちながら生きてきたので……。「女性差別」が辛いというよりは、女性として「区別」されているのが辛いというか。最初にも話しましたけど、「“女性として”どう思うか」を聞かれるとか、そういうのが。

牧村:そういう感覚を知っていて、小説を書いてくれる人が世の中にいてよかった、と思います。『私の中の男の子』の雪村みたいな人が小説の中にいてくれることで得られる「ひとりじゃない」感っていうのに、私個人はずっと助けられてきました。

山崎:ありがとうございます。

牧村:この方は、それを自分でどう飲み込んでいけばいいのかわからなくて悩んでいらっしゃるとのことですけど、悩み続けよう、って私は思います。一生答えが出ないかもしれないし、解決できないかもしれないけど、それでも悩み続ける。悩み続けるのにもコツがあって。

小池:ほほう、コツ。ご教授願います。

牧村:「悩む」って、悪いこと、ネガティブなことっていうイメージがあると思うんだけど、必ずしもそうじゃないと思う。歩いている、食べている、遊んでいる、働いている、悩んでいる、っていうニュートラルな動詞として捉えてみてほしいの。悩むなんていけないことだ! じゃなくて、ああ、今自分は悩んでるなあ、って。そうやって悩み続けていると、頭がぐるぐるしてくるじゃない? それで「ああぐるぐるしてるなあ、疲れたなあ」って思ったら休むの。そして……座禅を組んで瞑想する。

一同:爆笑

小池:いきなり禅!?

牧村:座禅って「考えない練習」なんです。言葉で聞くと難しそうとか足痛そうとか思うけど、本当はトイレに座っててもベッドに寝ててもできるんですよ。私は禅宗じゃないし、座禅のプロみたいな人が聞いたら怒るかもしれないけど、私はその「考えない練習」にも助けられたから。

小池:ふーむ、確かに、悩むことへの罪悪感を捨てるために禅的なものを取り入れる、っていうのは効果ありそうだよね。



◎質問コーナー② 「男らしさ」「女らしさ」に振り回された時はどうする?

小池:次もちょっと似たタイプの質問です。「恋愛や仕事の場で、『男らしさ』や『女らしさ』という概念に振り回されてしまいます。頭では気にしないほうがいいとわかっているのですが、性自認が両性的なこともあって、つい振り回されてしまうのですがどうしたらいいでしょうか」だそうです。禅以外の回答を。

牧村:禅いいと思うんだけどな(笑)。具体的にどんな感じなんだろう? 女の子なんだからコピー取ってよとか、男なんだからこういう仕事ができなきゃいけない、とかそういうのかしら。私だったら、そういう考え方の人もいるのねー、って言いますね。

小池:ナオコーラさんも、「女らしさ」に振り回されることってあります?

山崎:あります。すごく振り回されていますね。会社員時代も職場で振り回されていましたし。でも、牧村さんが著書の中で書かれていた、アイデンティティ自体は傷つけられないから、あなたはそうだけど私はこうだよ、という受け止め方をしていく、という言葉に「なるほど!」と思いました。小池さんはどうですか?

小池:うーん、私もそういうものに振り回されるのは嫌いだったので、振り回してくるものを無視して生きる、っていうタイプでした。

山崎:具体的にはどうやって?

小池:例えば高校時代だと、生徒会長とか剣道部部長とかの公的権力を握りにいっていましたね。周りに合わせて行動するのとか、女子のグループでつるむのとかがとにかく嫌いだったんですよ。じゃあ一番気兼ねなく一人になれるところに行ってやろう、そしてそれは「トップ」だろう、って思って。頂上まで行けば横には誰もいないから。

山崎:あはははは(腹をかかえる)。横に誰もいない、ってすごい言葉ですね(笑)。

牧村:つまり「トップをねらえ!」ってこと?

一同:大爆笑

小池:そうかも。「現実処理能力が高い」っていうのが、強調性のない私の数少ない強みだったのね。大人を納得させる書類を作るとか、理詰めで人と交渉するとか。それって男とか女とか関係ない部分じゃないですか。だからとりあえず権力握っといて(笑)、「小池会長ならこれをやってくれる」っていう認識を人に植え付けて自分のポジションを作ったというか。今もその延長でやっている気がする。

牧村:そこ大事よね。“人として”重宝されるってこと。男とか女とか言ってくる人もいるけど、それはそれとして自分は、って思えればいい。

小池:質問への回答になるかわからないけど、人の長所とか特徴ってジェンダーロールと関係ないところにも絶対あるはずなんで、それを使って権力なり人心なりをつかむ、そこから自分の陣地を作っていく、っていうのは一つの手段としてありかなと。ただ私の場合、そういうやり方ばかりしたが故に取りこぼしてきたものもたくさんあるので、振り回されさえしなきゃ良いってことじゃないと思います。





山崎: 確かに、自分の武器がはっきりわかっていると、振り回されることも気にならなくなるかもしれない。トップじゃなくても、そのポジションがあれば自分は自分、という立ち位置を考えてみるとか。この場所は私っぽいからここを目指す、という考え方でもいいですね。

小池:では、次を最後の質問にしましょうか。「朝子さんへ。いつもブログを拝読しています。ご自分が色んな障害を乗り越えながらマイロードを進み続けてこられた、その一番の原動力は何だと思いますか? 愛でしょうか? 運? 強さ?」。ドラマチックな質問だね。

牧:しかも「愛」のところにハートマークをつけてくださってる。かわいい。うーん、結局は、今自分が楽しいから、好きなこと、やりたいことをやっているだけだと思います。でも原動力って言ったら、杉本彩様の言葉かもしれない。

小池:多分ご存知の方が多いと思いますけど、牧村は杉本彩さんの事務所に所属しています。どんな言葉だったの?

牧村:「あなたが何かをする時に、横からいろいろなことを言う人がいるでしょう。でも自分の人生について選択できるのも、責任を取れるのも自分自身だけ。横からあれこれ言ってくる人は、あなたの人生に絶対に責任をとってくれないのよ」って。もう、うおおーって感じでしょ(笑)。その言葉を、何かあるたびに思い出してガソリンにしていたりする。あっでもガソリンじゃ駄目、臭いガスになっちゃう。もっと美しいたとえにしたい!

小池:女神の息吹を原動力にしていると。ちなみにナオコーラさんにとっての、ご自分の作家道を突き進む原動力はなんでしょう?

山崎:「本が好きだ」っていう気持ちですね。面白い本を書き続けていきたいし、そのために日々頑張りたいなって思っています。小池さんはどうですか?

小池:私もナオコーラさんと近いです。読むものが好きだし、書くのも好きだから、人の人生に少しでも良い影響を与えるものを作っていけたらいいな、っていうそれだけ。

牧村:やっぱり、「好き」って気持ちが大事なのよね。この質問者さんが「愛」にマークをつけてくださったのは正解ね。

小池:強さも結局、好きなもののために出てくる力だもんね。

山崎:牧村さんを「強い人」だと思う人が多いんでしょうね。実際、強いんですか?

牧村:うーん、そもそも「強い」っていうのが何かわからない。

小池:今日話してみてどうです、ナオコーラさんには牧村が強く見えましたか?

山崎:うーん。……普通。

一同:爆笑

小池:と、いい時間になりましたのでこの辺で締めさせていただきたいと思います。今日はお二人ともありがとうございました。

牧村山崎:ありがとうございました!

(了)



トークイベントの際には、お客様からこの他にもたくさん質問をいただきましたが、時間の都合でお答えできませんでした。後日、改めて著者のお2人と、山崎ナオコーラさんにご回答いただきましたので、12月11日にマトグロッソにて掲載いたします。お楽しみに。



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2014/11/27 更新




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小池みき(こいけ・みき)

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牧村朝子(まきむら・あさこ)

タレント、文筆家。オフィス彩所属。フランスの法律で国際同性婚、現在東京在住。主な出演に「5時に夢中!」「世界の日本人妻は見た」ほか。
2016年12月より、NHK文化センター青山教室にて、全4回のジェンダー論講座を開講。

山崎ナオコーラ(やまざき・なおこーら)

作家。1978年、福岡県生まれ。
2004年に、会社員をしながら書いた「人のセックスを笑うな」が第41回文藝賞を受賞し、デビュー。
著書に、『指先からソーダ』(河出文庫)、『この世は二人組ではできあがらない』などがある。
目標は、「誰にでもわかる言葉で、誰にも書けない文章を書きたい」。
性別のカテゴライズに、なかなか馴染めない。