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連載中から「早く続きが読みたい!」とたくさんの熱い声をいただいていた
『レイバーデイ』(原題:Labor Day)が、このたびついに書籍になりました!
タイトルは『とらわれて夏』。著者ジョイス・メイナードさんからは、
日本の読者のみなさんに向けたメッセ―ジが届いています!
また、心に傷を負った母と脱獄囚、思春期の「ぼく」……
三人の物語がスタートする第一章を再度掲載します。
5月1日(木)からはケイト・ウィンスレット主演の同名映画も公開決定!!






作品のなかのアデルとフランクの印象的な場面をモチーフにしたイラストをカバーに。
本文中の各章の扉にも、イメージカットが掲載されています。
(イラスト:いしさか玲奈/ブックデザイン:アルビレオ)


◎著者、ジョイス・メイナードさんからのメッセージ


日本の読者のみなさんへ


 はじめに、私の書いたこの小説が遠く離れた日本で出版されたことを、どんなに嬉しく思っているかをお伝えしたいと思います。登場人物はアメリカ人ですし、物語の舞台は私が育ったようなニューイングランドの小さな町ですが、私は『とらわれて夏』は、どんな言語で読んでも読者に共感してもらえるような普遍的なラブストーリーで、文化の壁を超える物語なのではないかと思っています。

 私は自分が命を吹き込んだ、『とらわれて夏』の登場人物たちと過ごす時間が好きでした。私の作品の登場人物みんなが、我が家の晩ごはんに招待したくなるような人間である必要はありません。でもなぜだか、私はつい自分が心底好きになってしまうような人物を作中に登場させてしまうようです(ただし、小説『誘惑』(原題:To Die For)の、ニュースキャスター志望の、名声に取りつかれた女だけは例外かもしれませんが)。『とらわれて夏』の三人の主役にも、同じことが言えます。ある意味で、彼らは三人ともとらわれ人です。アデルは孤独なシングルマザーです。傷を負った、無骨な脱獄囚フランクは、家に入れてほしいと彼女に頼み、かくまってもらいます。アデルの十代の息子ヘンリーは長く暑い連休の週末に、二人が恋に落ちていくのを目にすることになります。

 母親のアデルには、わたしとそっくりなところがあります。特に、彼女が息子にかまいすぎるところは。私のようにロマンティストなうえに、自己流の子育てをする過保護な親でもあります。ただ、ありがたいことに、広場恐怖症に縛られている彼女と違って、私にはそのきざしはまったくありません。

 自分自身の子どもを育て、世話をすること。そして自分も誰かから大事にされたいという渇望。たぶん、私はそれがどんなものであるかを知っているので、若い頃の自分に似た女性があんな風に思いやりに触れ、優しくされることになる(もちろん激しい愛も伴った)ストーリーを、考え出したのかもしれません。

 『とらわれて夏』は、人生の中ですでに大きな喪失を経験しているような年齢の読者のための、ラブストーリーであってほしいと思っています。アデルは大きな悲しみを経験していて、もはや二五歳のうらわかい女性ではありません。私は、すばらしいロマンティックなラブストーリーを、彼女に贈りたかった。だから、それを実現できる一人の男性を生み出しました。小説の中で彼に生命を吹き込んでいくのは楽しい作業でした。

 この小説はあまり現実的ではないという意見を聞かせてくれた人たちもいました。作者が救いようのないほどロマンティックで前向きな人間だから、この作品もある種のファンタジーになったのでしょう。私は、良い小説が人生の中で果たす役割のひとつは、「絶対にそうはならないだろうけど、そう生きられたらいいだろうな」と思えるような物語を見せることだと思っているのです。

ジョイス・メイナード



First off, I want to say how happy I am that this novel of mine has travelled all the way to Japan. Though my characters are American, and it takes place in a small New England town like the one where I grew up, I like to think of Labor Day as a story that crosses cultural borders—a universal love story that people can relate to in any language.
I loved spending time with the characters I brought to life in Labor Day. It’s not a prerequisite that every character I create should be someone I’d invite to my house for dinner, but in one way or another (with the possible exception of the fame-obsessed would-be television anchorwoman in my novel To Die For) I tend to populate my fiction with people for whom I feel real affection. This was certainly true of the three main characters in Labor Day, who are all prisoners in one way or another: The lonely single mother, Adele; the rough and damaged convict on the run, Frank, who convinces her to let him hide out at her house, and Adele’s young son, Henry, who watches the two of them falling in love over a long, hot holiday weekend.
The mother in this novel, Adele, bears certain definite similarities to myself—most particularly, in her fierce devotion to her son. Like me, she’s a romantic, with her own odd style of somewhat over-the-top parenting, but thankfully, I possess no trace of the agoraphobia that paralyzes her.
But maybe because I know what it’s like to raise a child on your own—taking care of that child, and yearning to be taken care of, yourself—I dreamed up a story that would allow a woman like my own younger self to have the experience of finding that kind of tenderness and care. As well as passion.
I like to think of Labor Day as a love story for people old enough to have had some big losses in their lives. Adele is a woman who has known some big heartbreak. She’s not twenty five any more. I wanted to give her a big, romantic love story. I dreamed up the man who could deliver that, and I loved bringing him to life on the page of my novel.
Some people have offered the opinion that this story is a little unbelievable. Well, it’s a fantasy of a kind, written by an incurable romantic, and an optimist. And I think that is one of the functions of a good novel in our lives: to offer up the stories we may never get to live, but wish we could.

Joyce Maynard






「おれはあんたの囚人だ、アデル」


◎Story

 13歳のヘンリーは、美しい母アデルとふたり静かに暮らしていた。そんなふたりの生活はショッピングモールで声をかけてきた男、フランクの出現で一変する。パイ作りが上手で、キャッチボールの相手をし、家じゅうの電球を付け替えてくれたフランクはしかし、三人もの殺人罪で服役していた脱獄囚だった。
 惹かれあう母とフランクの計画を知ったヘンリーの心は揺れて……。
 夏の終わりの六日間を感受性の強い少年の視点から鮮やかに描いた感動作! 

 アメリカでベストセラーになり、18か国で翻訳された本作は、13年にはジェイソン・ライトマン監督によって映画化。ゴールデングローブ賞主演女優賞にノミネートされたケイト・ウィンスレットらの演技力も話題になった。


◎各章トビラに人気イラストレーターいしさか玲奈さんによるカットを掲載

 ダ・ヴィンチ誌3月号の「この本にひとめ惚れ」コーナーで装画を手掛けた『赤ヘル1975』(著・重松清 講談社刊)が「ひとめ惚れ大賞」に輝いたいしさか玲奈さんが、文中に登場するモチーフをアンティークテイストで描きました。


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◎映画『とらわれて夏』も5月1日(木)に公開決定!



(c) 2014 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.


ジェイソン・ライトマン監督(『マイレージ、マイライフ』、『JUNO』で二度のアカデミー賞監督賞ノミネート)最新作!
ケイト・ウィンスレット(第71回 ゴールデングローブ賞主演女優賞ノミネート)、ジョシュ・ブローリン出演。

演技派の二人の大人に負けず、ヘンリー役のガトリン・グリフィスも、母と脱獄囚の関係を見つめる複雑な少年の心を見事に演じ切っています。アメリカの田舎町の美しさも見どころ。

2014年5月1日(木) TOHOシネマズシャンテ他 全国順次ロードショー
配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン

映画公式ウェブサイト:http://www.torawarete.jp/









とらわれて夏

『とらわれて夏』
イースト・プレス刊/1900円+税
3月7日発売!





2014/3/6更新






  
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とらわれて夏 『とらわれて夏』(イースト・プレス)
心に傷を負った母と思春期のぼく。救ってくれたのは、勇気ある脱獄囚だった。三人が共にした夏の終わりの鮮烈な六日間とその後――。三人それぞれに欠けていた幸せを手にすることはできるのか。たぐいまれな愛を描き、しみじみとした感動が心を満たす物語。

Joyce Maynard(ジョイス・メイナード)

1953年、アメリカ、ニューハンプシャー州生まれ。小説家、ノンフィクション作家、コラムニスト。10代のころから、セブンティーン誌に原稿が掲載されるなど文才を発揮する。エール大学1年生のとき、ニューヨーク・タイムズ誌巻頭特集を執筆、カバーも飾る。以来、多くの新聞、雑誌にエッセイを寄稿。またノンフィクション、小説共に多数の著書がある。日本で出版されたのは、『19歳にとって人生とは』、『誘惑』のほか、19歳のころ、当時53歳のJ.D.サリンジャーと暮らした日々のことを描いた『ライ麦畑の迷路を抜けて』など。3人の子供が成長した現在はカリフォルニアに住み、執筆活動の傍ら、アメリカ各地や海外で文章教室を開いている。映画『とらわれて夏』をとても気に入っており、そのセクシーで美しいパイ作りのシーンから、パイのレシピについての質問がさらに増えるかもしれないと、自身がアップルパイを作る動画を公開している。 ホームページはhttp://www.joycemaynard.com

山本やよい(やまもと・やよい)

1949年岐阜県生まれ。同志社大学文学部英文科卒。 サラ・パレツキーの『サマータイム・ブルース』(早川書房)をはじめとした女性私立探偵「V.I.ウォーショースキー」シリーズに長期にわたって携わる。ほかに、『オリエント急行の殺人』『五匹の子豚』(早川書房)等のアガサ・クリスティーの新訳や、メアリ・バログ『麗しのワルツは夏の香り』(原書房)など、ミステリーやロマンスを中心に訳書多数。