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この研究のここがスゴッ!

Lab:016b 東京工業大学 佐藤・長谷川研究室 長谷川晶一




「バーチャルとリアルの境界」


 佐藤・長谷川研究室では、力覚インターフェイスの研究を長年続けてきています。下の写真を見てください。赤い輪の部分に指を入れて、糸を引っ張ることで、バーチャルな世界にある物体をつかむという体験ができる「SPIDAR」という装置です。



 力覚とは、文字通り力を知覚するという意味で、前回の長谷川先生のご説明にもあったように、糸を引っ張ることで、何かにぶつかった感覚や持ち上げた感覚を再現(これをフォースフィードバックといいます)できるんです。つまり、画面のなかに手を入れて、机の上のリンゴをつかむというような感覚が体験できてしまうのです。身近な力覚ディスプレイとしては、家庭用ゲーム機のコントローラに入っている振動装置や、ハンドル型コントローラのまわすと重くなるシステムなどが挙げられます。
 映像にあったボール型のSPIDARを実際に体験してみると、床に当たった瞬間、もしくはリンゴを持ったその瞬間、コツッという振動が糸から伝わってきて、本当にさわっているような感覚を味わえます。長年の研究により、佐藤・長谷川研究室の力覚ディスプレイはスペシャルな域に達していると思います。

 さらに、長谷川先生は、触れられる側の世界を作る研究も積極的に進めています。
 映像の中に手を入れるには、触れられるほうにも準備が必要です。体験者のランダムな動きに対応するには、バーチャルなキャラクターにも人間のような感覚や感情を持たせる必要があるのです。画面内のクマには、視覚と、動くものなどに注目するという反応が与えられています。それによって生き生きしたやり取りが可能になります。



 この研究がどんどん進んでいけば、バーチャル世界とリアルな世界はどんどん近づいていき、境界が曖昧になっていくでしょう。
 それを体現するのが写真にあるぬいぐるみ。このぬいぐるみ、SPIDARのように糸で動くようになっていて、握手などに反応して、動きでコミュニケーションできるんです。この研究では、バーチャル空間がぬいぐるみの中身まで進出してきているんですね。つまり、これもバーチャルに直接手で触れるということを目指した研究なのです。



 いまのところ、一般的には、リアルとバーチャルは、コンピュータの画面で区切られています。NTTドコモ福本雅朗さんの研究しているウェアラブルは、このコンピュータの画面をより身体に近づけるという意味もあると思います。HMD(ヘッドマウントディスプレイ)はバーチャル世界に入り込む没入感を体験できます。そういったデバイスと合わせるために、次に必須なものが力覚ディスプレイなのです。
 いつか、バーチャルとリアルが混じり合う世界を見せていただきたいと思います!

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