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この研究のここがスゴッ!

Lab:021b 理化学研究所 脳科学総合研究センター 藤井直敬 脇坂崇平




「現実と虚構の境目を揺るがす」


 実際に私も体験してきました「SR(代替現実)システム」。あらためてどういうものかをご説明します。
 映像のなかで私がかぶっていたのはヘッドマウントディスプレイ(HMD)と小型カメラ、ヘッドホンが一体になったもので、通称「エイリアンヘッド」です。
 ライブ映像は小型カメラで撮影し、そのままHMDに表示されています。つまり現実に見えているはずの景色です。その映像を過去に録画した映像にそっとすり替えてやると......、体験者はまったく気付かないまま、過去へと誘われてしまいます。私もいきなりだまされました。まさか機材の説明の段階で、すでにすり替えられていたなんて、気付きませんでした。
 このエイリアンヘッドには、モーションセンサーが搭載されていて、頭を動かして視線を移動させると、それを感知するようになっています。過去の映像の撮影にはパノラマカメラを使います。これらを組み合わせることで、視線に合わせて見渡せる過去映像という、カメラを通して見ていたライブの映像と見分けがつかない世界が出来上がります。

 藤井先生は、もともと「脳の社会性」について研究している脳科学の研究者です。SRシステムも、実験装置として作られました。しかし、出来上がってみると想像以上に人を楽しませる装置ができたというのです。
 たしかに、実際に体験してみると、体験前と体験後では少し世界が違って見えるような感覚を味わえます。前回の映像のなかで、この体験は「生きるために必要なリテラシー」になっていくと言いましたが、コンピュータがさらに発展し、VRやARの技術が発達した世界では、現実と非現実の境目は曖昧になっているでしょう。そういう未来に向けて、目の前の現実を疑ってみるという視点を持つことは、とっても大事なことです。情報の真実性にまずは疑問を持つということを、身を以て体験できる点が、この研究の素晴らしい点なのです。

 それから、私が装置をはずした瞬間(そのとき見ていたのは正面にいた脇坂さんだったのですが、実際に目の前にいたのは藤井先生でした)、おもわず「どうにでもなりますね」と言いました。アート的な目線でいうと、これも大事な部分なのです。どうにでもなるということは、いろんな表現の可能性をすごくたくさん持っているということです。グラインダーマンが演出した「MIRAGE」がその第一弾だったわけですが、SRシステムにはもっと様々な活用方法があると思います。
 SRシステムは、今後さらに、注目を集めていくでしょう。私もとても楽しみにしています。

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