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さらに詳しく文字解説

この研究のここがスゴッ!

Lab:024b 情報科学芸術大学院大学 小林 茂




身体がコンピュータと触れあう

「フィジカルコンピューティング」


 IAMAS(情報科学芸術大学院大学)小林先生の研究、ご覧いただけましたでしょうか。
 今回ご紹介させていただいた「フィジカルコンピューティング」は、身体が直接コンピュータと触れあうためのテクノロジーです。コンピュータが登場してからおよそ40年、中身はすごい速度で進化してきましたが、「マウス、キーボード、モニタ」で操作するという基本的な構造は、最近まで変わってきませんでした。しかし、ここ数年、タッチパネルやセンサー、マイコン類の普及で、コンピュータは身体的に直接触れるものへと変わってきました。決まった形を持たないものに進化しつつあります。
 センサーを使って人間の行動に直接反応するコンピュータを、部品を壊したり、火傷をしたりしながら、体験的に作り上げていく行為をフィジカルコンピューティングと言います。
 小林先生が開発されたGainerArduino FIOは、フィジカルコンピューティングを実践しやすくするためのツールキットです。体験的に制作していくための機能が凝縮されています。

 これまでのものづくりにおいては、企画書や設計書でのプランニングを何度も行い、決まってから作る、という過程を踏むものがほとんどでした。それから試作し検討を重ねと時間をかけるうちに、最初に思い描いていたものからは遠いものができてしまう、そんなことも多々ありました。
 これからのものづくりは、コンピュータの変化と同じように、もののデザインから体験のデザインへと移行しつつあります。これまでの枠組みとはちがう、新しいものを作り出していくためには、ツールキットだけではなく、「ものの作り方」そのものを変えることが求められているのです。
 体験のデザインでは、「使い心地のよさ」がとても大事になってきます。持ってみてどう感じるか、使ってみてどう感じるか、という実験と検討を繰り返し、メンバー間で共有しながら作っていく過程が必要になってきます。そのためにはプロトタイピング(試作)の手軽さとスピード感がとても重要なのです。

 紹介されていた「GANGU Project(新しい玩具を作る)」での制作過程は、これからのものづくりを考えるうえで重要なモデルケースになると思います。
 まずはリサーチからはじまり、それを決まったフォーマットで記述するアイデアスケッチ、粘土などですばやく形にして、実際に持ったときの感じや印象などを考えるダーティモデリング、モデルを動画で撮影して効果音をつけるビデオスケッチングを経て、Gainerを使って電子回路とプログラムを検討していくハードウェアスケッチに進みます。
 この方法だと、プロトタイピングと意見交換を何度も繰り返すことができます。それぞれのプロトタイピングを数時間単位ですばやく行っていくことにより、作りながら面白さを追加していく、何度もやり直し、体験しながら考えていくものづくりが可能になるのです。
 小林先生の研究は、方法と道具の両面から、ものの作り方を変えていく、これからの時代になくてはならない研究なのです。

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