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Lab:032 明治大学 橋本 直




「セーブ&ロード、コピー&ペーストできる実世界」


 今回ご紹介した橋本先生は、「工学ナビ」というプログラミングや電子工作についての情報を発進するウェブサイトを10年にわたって運営してきた方です。
 工学の楽しさをたくさん伝えてきた橋本先生が、2013年4月から着任したのは、明治大学の新しい学科「先端メディアサイエンス学科」です。ソフトウェア、ハードウェアの両方にまたがり、これからの新しいものづくりに即した教育を実践していくというまさに最先端の学科です。
 23年前、慶應義塾大学に湘南藤沢キャンパス(SFC)ができ、コンピュータを使った新たな取り組みを次々と始めていきました。そこから面白いムーブメントが生まれ、優秀な人材がたくさん輩出されました。私は、明治大学のこの新たな挑戦をとても楽しみにしています。SFCの時とは時代が違います。いったいどんな面白いことが起きてくるのか、大注目です。

 橋本先生の研究は、まさにこの新たな学科にふさわしい研究だと、私は思います。
「デジタルネイティブ」という言葉を聞いた事はあるでしょうか。生まれた時からコンピュータやインターネットが普及し、それらに慣れ親しんできた世代のことをいいます。これから大学生になる世代はまさにデジタルネイティブなのですが、彼らには、彼らにしか分からない文化や考え方があるはずです。
 コンピュータを日常的に使っている人にとって、例えば、ドラッグ&ドロップという動きはごく自然なことになっていると思います。
 これまでのコンピュータは、デジタルネイティブではない世代の人たちが作ってきたものです。そのインターフェースが目指したのは、コンピュータを実世界になるべく近づけて、使いやすくしていこうというものでした。コンピュータ内で「ゴミ箱」や「デスクトップ」といった言葉が使われているのはそのためです。
 しかし、デジタルネイティブにとっては、逆にコンピュータの世界で培われてきたアイデアや考え方、テクニックのほうが、使いやすく自然なものだと感じることが多々あるのです。橋本先生の研究はまさに、デジタルネイティブにとって当たり前となったこれらのテクニックを、現実世界に取り入れていこうというものです。
 橋本先生は、それらの実装(実現するための作業)にARロボティクスを応用していました。橋本先生の研究は、将来、ロボットが日常生活に入ってきたときの操作方法を、より自然により分かりやすくしていってくれるでしょう。新しいプロダクトが普及していくうえで、最も重要なもののひとつは、使いやすさ、つまり「ユーザビリティ」です。難しくてだれにも使えないものは日常生活には浸透していかないでしょう。これまでなかったものとユーザーの間にはどうしても大きなギャップができてしまうものです。そのギャップを埋めていくために、橋本さんの研究があるのです。
 橋本先生が目指しているのは、さらに進んで、実世界がコンピュータの中の世界のように編集できる(エディタブルな)という未来です。壁紙の色や、イスの形をタブレットを使って変えたり、コピー&ペーストで増やすなど、これまでは考えられなかったことが次々に実現していく可能性を持っています。

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