• 1





Lab:033 慶應義塾大学 舘 暲研究室




「テレイグジスタンス」


 舘先生の研究いかがでしたか?
 舘先生は、東京大学でバーチャルリアリティロボティクスの研究をされてきましたが、そのなかでも長年のテーマとして取り組んでいるのが、「テレイグジスタンス」です。
 テレ(遠隔)+イグジスタンス(存在感、臨場感)
 つまり、遠隔地にあるロボットの中に入って、一体化するように操作することで、遠隔地にあたかも居るような臨場感を再現するという研究です。
 ひとことで臨場感といっても、それはさまざまな感覚が掛け合わされたものです。舘先生の研究では、五感のなかで視覚、聴覚、触覚を伝達する技術を研究し、それらを複合してテレイグジスタンスを実現しているのです。

 舘先生は、ロボットには大きくわけて二種類の考え方があると言います。
 それは、「自律ロボット」と、「分身ロボット」です。自律ロボットとは、あくまで他者として存在し、意志をもって自分で考えて動くロボットです。それに対して分身ロボットは、意志は持たず、人間の手助けをするロボットです。電動義手なども分身ロボットになります。
 ロボットには、人間が出した命令に対して、危険があり、不可能な命令だった場合、それをできないようにする、もしくは、安全にできるように誘導するという機能が必要です。その機能を「安全知能」と呼ぶのですが、分身ロボットにとって、これはとても重要な機能だといいます。自分の意のままに動かせるということは、じつはすべてが自由というわけではなく、いくつもある関節を自然に動くように制御し、なおかつ、操縦者から見えない場所にある障害物などを動作のなかで避ける必要があります。自動で補助してくれるという能力が大切なのです。
 舘先生は、テレイグジスタンスを発見するキッカケになった、「盲導犬ロボット」の研究のなかで、この安全知能を「賢い不服従」という形で発見したのだそうです。今日のロボット技術はこうした発見の積み重ねによってできているのだと思います。
 
 テレイグジスタンスという概念を舘先生が提唱したのは、1980年のことです。今回のインタビューでは、30年以上におよぶ膨大な研究を凝縮して語っていただきました。最新の「TELESAR V」には、最初の「TELESAR」と比べると、感覚、腰の動 き、操縦者のディスプレイなど、とても多くの技術が搭載されています。それらの周辺技術も舘研究室発のものが多数あります。
舘先生の研究を木に例えると 研究には、長年かかって取り組む「幹」と、その過程で必要となる周辺研究、つまり「枝」にわかれます。この幹と枝の関係が重要で、幹となる主研究が太く壮大で、しかも、枝である周辺研究がたくさん生み出されるものであると、その研究は世の中を動かしていくエネルギーが大きいということになります。
 テレイグジスタンスはとても大きなエネルギーを持った研究です。舘先生の研究の幹はまだまだ大きくなっていくでしょうし、これまでたくさん伸びてきた枝もまだまだ増えていくでしょう。光学迷彩や、立体視、触覚伝達などの研究は、独立して1本の木として成長しています。それと同時に、この大きな木からは、これまで「にっぽんスゴッ研究所」にご登場いただいた稲見昌彦先生梶本裕之先生をはじめ、大勢の優秀な研究者が育っているのです。

  • 1