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Lab:039 千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター 古田貴之




「誰でも簡単に動かせるロボット技術が未来を創る」



 千葉工業大学未来ロボット技術研究センター(略称:fuRo)では、今回ご紹介したロボットのほかにも、たくさんのロボットが研究、開発されています。驚くべきは、その完成度デザインです。基礎的な技術を開発するだけではなく、使いやすさや、人々の生活のなかになじみやすい見た目まで考えて作る、そんな姿勢が、どのロボットからもありありと感じられます。ロボットのデザインは、にっぽんスゴッ研究所でご紹介した山中俊治先生によるものです。
 千葉工業大学は、東京スカイツリータウンにもキャンパスを持っていますそこは、一般の方が観覧、体験できる展示スペースになっているのですが、そのアートディレクションとインタラクションの開発を担当したのは、THEアーチストのコーナーで紹介した、緒方壽人さん です。fuRoは、人々にロボットや工学の面白さを伝えていくことにも非常に積極的です。

 古田先生の研究には「未来を創る」という強い信念と、明確な目標があります。
「ピンチとチャンスは紙一重」高齢化社会は大ピンチですが、それを克服できるような社会システムと技術ができれば、日本は高齢者の先進国になれる。これは大チャンスになるといいます。
「技術が未熟だから環境破壊が起きる」技術が進歩して、どこでも行けるようになれば、平らな道路がなくても、どこにでも移動できるようになる。技術に環境が合わせていくのではなく、環境に技術が合わせていくと地球環境はよりよいものになっていくでしょう。その考え方から生まれたのが「HallucⅡ」です。

 古田先生は、「ロボットとは何ぞや」と問いかけます。私たちがまず思い浮かべる人間型ロボットには、じつは機能が入っていません。ハンディカメラなど、機械の名前には機能が込められています。しかし、人間型ロボットという言葉はカタチしか現していないのです。
 古田先生によると、ロボットとは「感じて考えて動くかしこい機械」です。「動く」部分の研究は人間型ロボットでもたくさん研究されてきました。「感じて考える」部分が、ロボットにさまざまな機能を持たせるのです。そこで重要になってくるのが、周りの環境を認識できるセンシング技術です。fuRoでは、カメラとセンサーを持って歩けば、リアルタイミングで画像のようにまわりの環境を3Dの詳細な地図が作れるという技術を開発なさっています。
 また、そのセンシング技術を使って、自動操縦の技術も開発しています。つくば市で行われた自動操縦のコンテストでは、3年連続で完走し、つくば市長賞を受賞しています。

 実現したい目標を明確に持って、それを解決するための技術をどこでも動く強いシステムとして開発し、ロボットに実装していく。それが古田先生とこのセンターの強みなのです。
 古田先生は、「研究室の中だけで動くのではまったく意味がない」と言い切ります。誰でも簡単に、確実に動かすことができるということが重要なのです。その姿勢が、原子力発電所の調査ロボットに活きているのです。限られた環境でしか動かせなければ、ガレキだらけで何が起きるかわからない原発の内部に送り込むことはできません。

 古田先生のその強い想いは、映像内でも語られたとおり、病気で死にかけた経験からきています。
 中学生のころ古田先生は、突然倒れて余命8年と宣告されました。さらに、下半身不随となり、生きているあいだは、車いす生活だと言われました。同じ病気で入院していた友人たちが亡くなっていくなかで、古田先生の病気は奇跡的に完治します。死に直面した古田先生は「人生とは究極の自己満足劇場なのだ」と考えるようになったそうです。先生が考えた自己満足とは、人の心を動かすということです。研究者にとって、人の心を動かすには、その研究が社会の役に立ち、人を感動させ、文化の礎になったか、という部分が重要です。

 最後に、人の役に立ち、世の中を変えていくために必要なこと。それは、一品ものではだめだということです。そこで、fuRoでは、多くの企業と協力し、技術を広めるという活動にも注力しています。これらすべての研究・活動が、まっすぐに「未来を創る」という目的を見据えている、未来ロボット技術研究センターとは、そういう研究室なのです。

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