いつから人は大人になるの? 大人になるってどういうこと?
進路を決めかねている高校3年生のカホが、
夜の公園で木村先生に教わったことは──。



 
































 

作品の内容ににちなんで、子どもの頃の絵と先生にまつわる話を…。

小学6年生の頃、僕のクラスでは生徒の自主学習を促すために担任の先生が作ったある制度がありました。それは、前の日に家で勉強してきたノートを翌日の朝に提出すると、黒板の横に張り出された表の自分の名前のところにシールが貼られるというものです。

一定枚数が溜まるとご褒美がもらえた、かは覚えていませんが、ただシールの枚数が溜まっていくだけでも、不思議と達成感と優越感が湧いてくるものです。したがって、同級生はわりと熱心に勉強に取り組んでいました。

一方、勉強ギライの僕です。熱心な同級生のシールはどんどん溜まっていくのに、僕のは一向に溜まりません。そこで考えた苦肉の索が、一日2、3本の「4コマ漫画」を描いてくることでした。図画の自主学習だと言い張って先生に提案すると、「面白かったら認めてやろう」と一言。

翌日、早速第1作を提出しました。詳しい内容は覚えていませんが、絵だけでセリフのないサイレントものだったように記憶しています。果たして笑ってくれるのか…。

やや緊張しながら担任の先生に提出しました。先生は当時30代前半、星新一のショートショートと中川いさみの漫画をこよなく愛する男です。

休み時間の教室。先生は他の生徒が提出した漢字練習だの計算問題だのの丸つけに混じって、僕の処女作を読んでいました。

僕はドキドキしながらその表情を見つめていると、「クスッ…アハハ!!」なんと先生は僕の漫画を読んで、大きな声を上げながら笑ってくれたのです。そして、黒板横の表には、無事に念願のシールが貼られました。

処女作のヒットに味をしめた僕は、それから小学校卒業までの一年間、毎日4コマ漫画の連載を続けることになりました。

先生が僕の漫画を読んで笑ってくれたのは、生徒の好きなことを肯定しようという、教育者としての演技だったのかも知れません。けれど、あの大きな笑い声と、それを聞いたときのなんとも誇らしい気持ちは、今でもはっきりと覚えています。

(スズキスズヒロ)

 





 

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2016/03/30 更新

 

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  • スズキスズヒロ(すずきすずひろ)

    1992年、仙台市生まれで在住。過去作は全てmatgrosso参照。
    Twitter:@suzuhirosuzuki