◎Michaelとしかできない番組
──Mamiさんはネイティブ並に英語が堪能ですが、東京生まれ東京育ちなんですよね。
そうなんです。よく聞かれるんですが、帰国子女ではなくて、普通の日本人です。
──どんなお子さんだったんですか?
目立ちたがりで、緊張しない子供で……。ピアノの発表会でも直前まで毎回失敗してるのに、本番だけできるみたいな(笑)。小学生のときは乗馬が好きで、乗馬のキャンプに行ってたりとか。
──それも日本で?
日本です。長野県で。あと恐竜が小学校の頃からずーっと好きで。部屋も恐竜の模型だらけで、男の子の部屋みたいだったんですよ。恐竜はいまも好きです。
「2年ほど前、暇すぎて、デザイナーとかが使う業務用粘土でつくってみた恐竜(笑)」
──いちばん好きな恐竜はなんですか?
ヴェロキラプトルみたいな、そういう肉食のが。
──恐竜に惹かれるのはどんなところでしょう。
あれが本当にここにいたっていう……それがすごいなって(笑)。あとなんでいなくなったかっていうのもよくわかんないし、わかんないことが多すぎて気になる、みたいな。うちの母親がよく言ってるんですけど、私が小っちゃいときに博物館に連れて行って、おみやげで草食動物のぬいぐるみかなんかを欲しがるかと思ったら、アンモナイトの化石を持って来て「これ買って」って。全然かわいくないし、意外と高いっていう(笑)。「なんでそんなの欲しいんだろって思った」ってよく言ってます。
──周囲の影響があったりとか?
いや、5歳下の弟がいるんですけど、別に恐竜に興味ないし、まわりの友達も興味なくって。それで考古学者になりたいと思ってました。毎日恐竜の骨を掘って暮らしたいなって。
──そのあたりの興味がPodcastに活かされてる。
実際恐竜に限らず、不思議なものをちまちまリサーチしたりっていうのは、ずっと好きだったんですよ。それは自分だけで完結してたんですけど、Podcastをやることで大勢の人とシェアできるようになったんですよね。それについてはいまだに不思議な気がしています。
──ほかに10代の頃にはまったものはありますか。
洋楽とか好きで……すごいベタな、Britney Spearsとかの。あと映画も好きで、ホラー映画ばっかりよく見てました。グロいのとか、女の子が主人公で、やりかえすようなのが好きで。リベンジ系の。「がんばれー!」って思いながら見る(笑)。
──英語はどうやって習得していったんでしょう。
親戚が何人かアメリカに住んでて、カリフォルニアのいとこが家に来たときに、彼女が英語で本を読んでくれたりしたんですね。発音はそこから来たから、英語話してるとだいたい「カリフォルニア? それともハワイ?」って聞かれる(笑)。アクセント的に。あと母親が英語ペラペラで。ただ私が英語をちゃんと喋れるようになったのは、16歳過ぎてからだったと思います。
──何かきっかけがあったんですか?
もともと海外の映画とかドラマをよく見てたんですね。あと祖父母がしょっちゅうハワイに行ってて、自分もそれについて行ってたから、「話せたほうが楽しそうだなあ」みたいな。いとこもハワイに住んでましたし。だからけっこう練習はしました。実際に使ってみたりして。もともと「恥」っていう感情があんまりないから(笑)、それでけっこう助かったと思います。間違えても恥ずかしくない。
──実際に話すことはやっぱり大事ですよね。
そう思います。たまに「これ、聞いてるだけでペラペラになりますか」って聞かれるんですけど、いや、なりませんと(笑)。聞くのと話すのは違うので──話すのはやっぱり話す練習をしないと、どうやっても身につかないと思うんですよね。
──ただMamiさんは単に英語力があるというんじゃなくて、ニュースの取り上げ方やコメントなんかにも、視野の広い見方や考え方が表れてると思うんです。
どうだろう。それはたぶん、英語を話せるといろんな国の人と話すようになるからじゃないですか。大学にもいろんな人がいたし。そこで自然といろんな意見や考え方を知ることになって──あと英語ができると海外のニュースを読む機会も増えるので、そういうことで情報だったり視野だったりが広がった部分はあるかもしれません。
──もともとMichaelとはどういうきっかけで知り合ったんですか?
大学が一緒だったんですけど、その頃は知り合いじゃなくて。そのあと、いまから3、4年くらい前に友達のパーティで会ったんです。ふたりとも宇宙や科学の話とか、あと変な話が好きで(笑)、すごく仲良くなったんですよ。私は友達の間では、「Mamiはいっつも変なことを調べてて、変なことに詳しい」みたいな感じだったから。
──変なことというのは、たとえば。
「日本の未解決怪奇事件」みたいのとか、いっぱいあるじゃないですか(笑)。そういうのを唯一ちゃんとまじめに話して、議論になるのがMichaelくらいだったんですね。そんな話で盛り上がれる人は、Michaelくらいしかいなかった。
──そこからPodcastに。
アメリカにJoe Roganっていう人がいて、“The Joe Rogan Experience” っていうPodcastをやってるんですね。彼はコメディアンなんだけど、もともとすごく頭がよくって。毎回歴史学者だったり科学者だったりエキスパートをゲストに呼んで、いろんなissueについて話をする。それが楽しくて、ふたりともずっと聞いてた。それで「うちらもこういうの、やってみたいね」と。私たちも普段からSkypeとかで4時間も5時間も話をしてたし、「もしかしたらほかの人たちにも面白いと思ってもらえるかもしれないよ」って。
──自分たちがいつも話しているようなことを、そのまま話せばいいと。
そう。そのあとさらにMichaelが「日本語と英語、両方で話したらいいんじゃない」っていうアイデアを出してきて、Michaelはずっと英語で、私は日本語でっていう──「バイリンガル会話形式」って勝手に名乗ってるんですけど(笑)、それでやろうって決まりました。最初あんまり何も考えてなくて、なんの練習もなしに「じゃあ今日やるか」みたいな感じでやって、そのまま出して。ほんと最初の頃は「いま何人くらい聞いてくれてるのかなあ。5人とか10人とかかなあ。うちのママ入れて」みたいな感じでやってたんで(笑)。でもまあ、誰かひとりでも聞いてくれるなら意味があるかなと思って。
──毎回たっぷり収録されてますよね。
最初は15分くらいを目指してたんですけど、やっぱり話してるうちに広がっちゃって1時間くらいにはなっちゃう。「まあそれでもいいよね」と(笑)。時計も見ないで収録してます。
◎「いい声」なんて初めて言われた
──いまはどれくらいのリスナーがいるんですか?
ダウンロード数でいうと、1エピソードごとに何万、トータルで何十万くらい。ラジオで爆笑問題の太田光さんが取り上げてくださったら、いきなりiTunesのPodcastランクの1位になって。そしたらすぐにサーバーが落ちたという(笑)。それをMichaelが徹夜でなんとかしてくれて……彼はITの会社を起業してるくらいだから、そのあたりは詳しいんだけど、私は全然よくわかってない(笑)。
2013年7月4日のiTunes“Top Podcasts”。突如1位にランクイン!
──太田さんがラジオで話してくれたっていうのは、あとになって知ったんですよね。
3日後くらいに。それまでTwitterで「バイリンガルニュース」って検索してもほとんど引っ掛からなかったのに、いきなりガーッと来てて。最初、なんか別のバイリンガルニュースかと思って「これ名前被ってる! やだー」と思ったら、自分たちのだった(笑)。えー! と思って、そのとき会社にいたんですけど、「やばいやばい! 爆笑問題の太田さんが話してくれたみたいなんだけど! しかも1位になってるんだけど!」って。会社の人も「お、すごいじゃーん」と(笑)。こんな奇跡あるんだ……って思いましたね。
──リスナーの層はどのあたりなんでしょうか。
だいたいは日本に住んでる日本人で、たぶん20代から30代くらいの人がいちばん多いと思います。あとTwitterでよく話しかけてくれるのは受験生とか。たぶんなんですけど、受験生って常に勉強しなくちゃいけないっていうのが頭にあるから、楽しいことしてると罪悪感があるじゃないですか。だけどバイリンガルニュースだったら一応英語だから、罪悪感なしに聞けるんじゃないかなって(笑)。あとは……主婦の方もけっこういて、家事のときに聞いてるとか。親子で聞いてくれてる人もいるし、トラックの運転手さんもいるし。最高齢だと71歳のおじいちゃんがFacebookにメッセージをくれたんですよ。その歳でPodcast聞いてFacebookやって……すごい、未来おじいちゃんだ! って思いました(笑)。
──いまはお友達とかも聞かれてるんですか?
そうですね、意外と聞いてくれてるみたいです。不思議ですよね、友達は別に、会ってないときにわざわざ私の話を聞くこともないのに(笑)。なんか、ありがたいですよね。でも久々に会ったのに、「いまねこ飼ってるんでしょ?」とか言われるとびっくりする(笑)。あとMichaelのお父さんも聞いてるみたいです。いろんな人が聞いてくれて……でも全体的に、男性の方が少し多いかなっていう気はします。もともとラジオ文化って、男性のリスナーが支えてるところがあるでしょう。
──あ、それは確かにありますね。
私も全然よくわかってなかったんですけど、爆笑問題のラジオに出るっていうときに、番組の熱心なリスナーさんからいっぱいメッセージもらったりして、「すごい、ラジオすごい」って。ハガキ職人さんとかっているじゃないですか。そういうの、いままで考えたこともなかったんで。みんな優しいんですよね。「爆笑問題カーボーイ」のファンの人たちは、やっぱり爆笑問題のことにも詳しいし、番組のことにも詳しいし、出る前にいっぱいメッセージとかアドバイスをくれて。「太田さんは本番前はぶっきらぼうだけど気にしないで」とか。ほんとありがたかったです。こんな素人なのに出ちゃっていいのかなって思ってたので、番組のファンの方が受け入れてくれたっていうのはうれしかった。番組のプロデューサーに聞いたんですよ。「いままで素人を番組に呼んだことってありますか」って。そしたら「ないです」って。「ですよねえ」みたいな(笑)。
──リスナーのリアクションで、「いままでの人生で初めて言われた」ということはありますか。
声をほめられたりとか……それはいままでまったくなかったことで。あと「話し方がギャルっぽい」とか(笑)。日本語が高校生で止まっちゃってるんですよね。大学は日本ですけど、インターナショナル系で会話も授業も全部英語だったんで、そこで日本語が若干劣化したみたいな(笑)。あと「知識が豊富」っていうのも、普段の生活ではまったく言われない(笑)。
──バイリンガルニュースは、リスナーとの距離が非常に近い感じがしますよね。
Twitterもなるべく返事したいと思ってるんですけど、最近はもう全部には難しいですね……。前にゲストで出てくれたRyは、ソーシャルメディアのマーケティングのプロなんですけど、いつもバイリンガルニュースのFacebookを見て、「どうしたらこんなにLikeとCommentをもらえるの?」って(笑)。普通の企業はそこで、お金をかけるわけじゃないですか。いかにエンゲージ率を上げるかみたいな。あと私ももともとPRの仕事してるから、いまの結果はそこからするとちょっと微妙っていうか。うれしいんですけど、お金かけてないのにここまでできるっていうのを自ら証明してしまったから、クライアントになんて言えばいいのか(笑)。
──自分たちの仕事の存在意義が問われてしまう(笑)。Mamiさんの本業は、企業広報なんですよね。
そうなんです。コミュニケーション・コンサルタントっていうんですけど、海外のクライアントを日本向けにPRするお手伝いをしたり、逆に日本の企業が海外に進出するときのPRをしたり。
──学校を卒業してから、ずっとそのお仕事を?
大学生のときに、友達のお父さんがやってる会社でインターンをさせてもらったんですね。そこがたまたまPRの会社だったんですけど、やってるうちに「あ、これ楽しい」って。それからほかのPR会社でもインターンをして、そのまま採用してもらいました。だから仕事を始めたのは大学3年生くらいからで、けっこう早かったです。
──Mamiさんに向いていたんですね。
普通のVendorとかだと、お客様に言われたことをそのままやる。だけどコンサルタントは逆に、お客様に提案するわけじゃないですか。そのぶんすごくわかってないといけない。お客様のビジネスも、お客様以上か、少なくともお客様と同じくらいにはわかってないと。それがプレッシャーも含めて面白い。あとAgencyだったんで、いろんな案件があるんですよね。朝会社に行って、戦闘機のことを10分くらいやって、そのあとヨーグルトのことをやってとか、めちゃくちゃな感じで(笑)。いろんな種類の業界を垣間見れるというか。あとなんか、変な業界にも詳しくなれるから、変な話が好きな人としては、すごくうれしいっていう(笑)。興味なくて全然知らなかった業界でも、気づいたら詳しくなってたり。最後のほうはずっと航空業界の担当をしてたんですけど、楽しくて。「飛行機とか全然知らなかったのに詳しくなってる、自分」というのも新鮮だった。いまはフリーでやってるんですけど。
◎1位になったし、会社辞めます
──フリーになったのは、何か思うところが。
Podcastを始めて単純に時間がなくなったのと、フリーでもやっていけると思って。
──「会社行くときに電車降りないで、このままどこかに行ってしまったらと想像したことがある」と話されてましたね。
そうそうそう。ほんと思いました。ちょっと働き過ぎてて、人間いつ死ぬかもわからないし、このまま一生ずっとオフィスで働くのもどうだろう……って。その頃は月から金までびっしり残業して、反動で土曜日クラブ行って、飲んで、日曜日死んで、みたいなのをずっとやってたんですけど、会社にも、その不健康な生活にも疲れちゃって。そんなときに、仕事で2ヵ月くらいミュンヘンに行ったんですね。そしたら広い公園がたくさんあって、緑も多くて。夕方になると店が全部閉まっちゃうから、みんな早く家に帰る。その生活でストレスが軽減されて、「これいいな」と思って。
──こういう生活もあるんだ、と。
そんなところにPodcast始めちゃって、すごく楽しいんだけど、ますます時間がなくなって。そうこうしてるうちにリスナーが増えて、1位にもなったから、これをいまちゃんと頑張らないともったいない。「これをいいわけにして会社を辞めてしまえ」みたいな感じで。
──会社を辞めることに、不安はありませんでしたか。
辞めようって思ったときに、たまたまおっきいプロジェクトが社外であって、それを頼まれていたんですね。そのほかにもちょいちょい一緒にやろうって言ってくれる人がいて、「あ、これ辞めても意外といけるんじゃないかな」と。それで社長に「実はいまPodcastやってるんですけど、iTunesで1位になったから、もう辞めます」と(笑)。
──ボスはなんて言ったんですか。
「よかったねえ!」って(笑)。「なんかあったら仕事投げるからよろしくー」って。優しかった。超円満退社。いまは健康的な、早く起きて、早く寝て、運動してみたいな生活を。お酒もあんまり飲まないし。オフの日はおうちでくまちゃん(ねこ)と一緒にいます(笑)。
くまちゃんとは今年8月、シェルター(捨て猫保護施設)で出会った
──クラブもあんまり行ってないんですね。
なんかこのPodcastのせいで、いまもすごく行ってるみたいにみんな思ってるんですけど(笑)、ぶっちゃけそんなには行ってません。
──プライベートではどんな本を読まれてるんですか。
本を読むときはだいたい英語なんですけど……最近はなんか、くだらない小説とか(笑)。“Fifty Shades of Grey”ってあるじゃないですか。すっごい流行ったんですけど、イギリスのエロ小説みたいな。あれの2巻目を読んでます。ときめきがなくなった、熟女の方が読むような官能小説なんですけど。
──そういうジャンルがお好きなんですか。
いやそういうわけじゃないんですけど(笑)、あまりにも売れたから、なんでそんなに売れたんだろうと思って……興味本位です。
1巻は今年の夏休み、プーケットのビーチで読了
──最近、恐竜と女性が絡む官能小説っていうのが一部で話題になってますよね(“TAKEN BY THE T-REX”)。
そうだ。それこないだ「これMamiさん好きそう」ってtweetしてくれた人がいて。読んだほうがいいかな(笑)。
──ところで、おふたりとも顔出しをされていないっていうのは、何か理由が?
深い意味は全然ないんですけど、Podcastだから顔を出すっていう発想自体なくて。そしたら爆笑問題のラジオに出たぐらいから「顔出ししないんですか」ってすっごく言われるようになって。「こういうふうに想像してます」ってイラストとか送ってくれるんですけど、それが美男美女の絵ばっかりで、ハードル上がりすぎた(笑)。Michaelに「怖い怖い、もう顔出ししたくないんだけど。絶対がっかりされるじゃん」って言って。もともと個人に興味を持たれるとは全然思ってなくて、だから「何歳ですか?」とか聞かれても「え、そこなんだ!」と思ったりしたくらいで。
──そういえば、おふたりはおいくつなんでしょう。
10月22日で27歳に。Michaelはいま25歳かな。
──あ、Michaelのほうが年下なんですね。
すごく落ち着いてますよね……。あんな落ち着いてる人見たことない。焦ってるところも見たことないし、急いで走ってるところも見たことない。
──トークを聞いていても、「リアクションうす!」って思うことがあります(笑)。
笑ってても声に出ないから、たぶんみんなにはわかんない(笑)。これ爆笑問題のラジオでも言ったんですけど、一回Michaelが間違えてパソコンの中身全部消しちゃったことがあるんですよ。もう音楽とか写真とか全部なくなっちゃったのに、そのリアクションが「……あ」だけで(笑)。え、それだけ!? 焦らないんだ! と思って。この人何があったらテンパるんだろうと思って、びっくりしました。
──その爆笑問題の番組に出るっていうときも、「緊張するー」って超緊張してない声で言ってて。
そう(笑)、声には出ないんですけど、あのときはさすがに緊張してましたね。
──ちなみにMichaelはどんな感じのルックスなんですか?
Michaelのことをみんな、白人っぽい、(CIA元職員の)Snowdenみたいなのを想像してるみたいなんですけど、全然違う(笑)。坊主で、二重の幅が広い。パッチリおめめ(笑)。背が高くてマッチョです。普通にイケメンなんじゃないかな。
──収録はMichaelの自宅なんですよね。爆笑問題の事務所がある阿佐ヶ谷で。
それも本当に偶然で。でも私はMichaelが阿佐ヶ谷に住んでるのにずっと文句言ってて……うちから遠いんですよ。毎回毎回往復で2時間くらいかかるから、「早く引っ越してほしい」ってずっと言ってるんですけど(笑)。でも結果的には阿佐ヶ谷でよかったなって。
──「Podcastに時間取られすぎだ」って、お互いのボーイフレンドとかガールフレンドに文句言われたりっていうのはないんですか。
Michaelはいま彼女がいなくて、Podcastが始まった頃からずっと彼女募集中なんです。ぜひそれを書いておいてください(笑)。
◎でも、Michaelは“友人”です
──わりとそういうプライベートな話もされるんですね。
あ、全然します。彼女の相談とか……Michaelのこれまでの彼女、みんなかわいい子ばっかりなんですよ。あと家族の話とか、なんでも。私もなんでも言うから、お互い知らないこと、あんまりないんじゃないかな。親にも会ったことがあるし。
──でも付き合ってないんですよね。
でも付き合ってないんです(笑)。
──そこは声を大にして。
そこは声を大にして。太田さんにも「収録中ムラムラすることってないの」って言われたんですけど、全然そういうセクシャルな雰囲気じゃなさすぎて(笑)。ほんと兄弟みたいな感じで──ロマンチックな感じではないんですね全然。お互い変な話ばっかりしてるから(笑)。
──でも仲いいですよね……いっそのこと結婚すればいいんじゃないかと思いましたが。
いやいやいや(笑)。ていうかMichaelじゃなくても、自分が結婚してるところが想像できない。男の人と一緒に住んでる自分が想像できないんですよ。すごい自己中だから。
──でも番組だと、Michaelに対して配慮というか、気配りを自然にされてるような。
えーっ(笑)。どうだろう……。でもMichaelはすごく不器用だから、代わりにアピールしなきゃと思うことはあります。ちゃんと伝わらないんじゃないかと思って。
──「結婚っていう制度は自分に向いてない」と以前に言われていて。
子供が欲しくなかったら結婚する意味ってあんまりないと思っていて……自分は。保険とか税金とか以外の要素では。でも子供は欲しいから、そうなると結婚したいなあって思うんですけど──。
──でも男の人と生活してるところが思い浮かばない。
男の人って、洗面所とか汚くするじゃないですか。それがなんか……やだ(笑)。私はずっとルームメイトと一緒に住んでて、だから女の子は慣れてるんですけど。お互いベタベタしないし、自分のことは自分でやるっていう感じだから、すごく楽で。
──Mamiさんが好きになる異性のタイプはどのような。
ほんとバラバラなんですよね……。ただ弟がいるので、年下は絶対だめで。
──ああ、この時点でMichaelはアウトに。
そう(笑)。付き合ってたのはだいたい3、4歳年上の人が多いですね。25歳のときには34歳の人と付き合ってましたし。あとお花くれるようなロマンチックな人が好きで。Michaelはロマンチックなタイプじゃないからなー。
──Mamiさんはいまは彼氏は。
私は……内緒です(笑)。でもハーフの人が多いですね。もともと大学が、帰国子女か外国人がハーフの人しかいなかったし、会社も外資に入っちゃったから、その中で遊んだり友達紹介してもらったりすると、普通に日本人に会うほうが難しい感じで。あと日本語と英語の両方ができる人のほうが楽っていうのもありますね。日本語だけをずっと話さなきゃいけない、英語だけをずっと話さなきゃいけないっていうのも逆に疲れちゃうんで。……最近人に言われて気づいたんですけど、ねこのくまちゃんをほめてるときはずっと日本語なんですけど、怒るときだけ英語なんですよ。
──なぜなんでしょう。
全然わかんないです(笑)。なんかその……子供に話すBaby Talkみたいなのが、英語だとできないのかな。私が、個人的にですけど。あと英語だと怒ったりするときにスパっと言いやすいっていうのはあるかもしれない。彼氏とのけんかとかでも(笑)。
──Michaelがシモネタを振ってきたときも、よく“Shut Up!”って言ってますよね(笑)。
そうですね(笑)。怒ったときは絶対に英語かもしれない。その英語と日本語を混ぜて話すっていうのも私のまわりでは自然なことで。ルームメイトも英語と日本語を混ぜてしゃべってるから、家の中でもそうだし、彼氏もそうだったし、母親もそうで。Michaelもほとんど英語だけど、「めんどくさい」とか日本語で言うじゃないですか。
──「めんどくさい」とか「てきとう」とか。
そう(笑)。あと会社もそんな感じだったし。でもPodcastで英語と日本語を混ぜて喋ってると驚かれることも多いから、そのときは「あ、そうか」ってなる。
──意識して英語と日本語を使いわけるときもあるんでしょうか。
あー、たとえば仕事でPR用のリリースを書いたりするときは、母国語のほうがいいって言われますね。ちょっとでも間違えたりすると、大問題になっちゃうから。あと個人的にはメールを打つときは英語のほうが楽かな。漢字変換とかしなくていいし、それとときどき、語尾をどうしていいかわからなくなる(笑)。「だよ」とか「だね」とかでちょっと迷ったり。
──でもそういうニュアンスの違いをどう出すかっていうのは、普通に迷いますよね。
大学のときに日本語の文学の授業があって。たとえば狐を助けてあげたら人間の女性としてやってきて、結婚して、でも寝てる間に狐に戻っちゃうっていう「狐の嫁入り」みたいな話を読むんですけど、それが日本語だとすごく風情があるのに、英語になると急にくだらない話みたいに聞こえちゃうんですよね。なんか、ただの狐好きの変態の話みたいな。
──(笑)
海外から来ている、英語しかわからない学生は「なんだこの話?」みたいになってるわけですよ。だから日本語にはその意味以上にいろんなニュアンスが含まれていて、それが英語になると全部抜け落ちちゃうんだと思って。それは結構発見でした。『源氏物語』もストーリーだけ見れば、けっこうチャラい男がいろんな女に手を出してっていう、その繰り返しじゃないですか。しかも自分が娘のように育てた女の子ともセックスしたりとか、最悪な男なんですけど、それが日本語の古文だと趣きがあるように感じられる。でもそれが英語になると、そういうのが全部抜け落ちちゃうから、結局ただのチャラ男の話みたいな(笑)。それで海外の人たちが混乱してるのを見たときに、ああ、やっぱりこれは英語で読むものじゃないなと思って。どんなに気をつけて訳しても、無理なんですよね。伝わらないから。日本語のよさっていうのは、そういうところにあるんだなあって思ったりしました。
──日本語自体のニュアンスもあるし、それが生活や季節感ともリンクしてるから、なおさら伝わりづらいでしょうね。
日本人には当たり前の「月」といったら「秋」とか、あと春はピンク、桜、みたいなイメージは外国の人にはわからないから、それとかを先生がいちいち説明してるのを見て、日本語ってすごい詩的な言葉なんだなあと思って。
◎お互いに面白いと思うニュースを持ち寄って
──収録はMichaelの自宅でしてるんですよね。どういう環境で行われているんでしょう。
Michaelの自宅は普通のワンルームマンションなんですけど、それで最初は激安のUSBのマイクを使ってたんですよ。こんな小っちゃい。それだとさすがにまずいかなって、普通のスタンドマイクとか、ポップフィルター(マイクが呼吸音のノイズ等を拾わないためのガード)も買って──それでMichaelがいろいろがんばっていじった結果、いまのようになりました。スタンドマイクも最初は1本をふたりでシェアしてたんですけど、いまはゲスト用も含めて3本。今日ちょうど「もう1本買おうか」って話してました。すごい前進(笑)。今後ゲストが増えるときのことを考えて。
──収録は前後の作業含めて、5、6時間くらいかかるとか。
けっこう1日作業なんです。昼の2時3時から始めて、夜の6時7時に終わる。それを週に2回やってるから、もう趣味の領域を超えてる(笑)。音響さんとかもいないから、まずマイクのセッティングから始めて、マイクテストをして、そのあと内容のミーティング……といったら大げさなんですけど、ふたりでfactの部分だけ、日本語と英語で同じことを言えるようにして。「何百万」とか「何十億」とかの数字をすぐ英語と日本語に切り替えるのがけっこうめんどくさいので、事前にふたりでメモだけとって。
──毎回セッティングから始めるんですね。そんなに準備をしていてもちゃんと録れてないときもあったり(笑)。
そうなんですよ(笑)。ラップトップについてるマイクで録音しちゃって、それに私もMichaelも全然気づかなくて。収録が終わって駅に向かってたら電話がかかってきて「問題が発生したから、ちょっと戻ってきて」と(笑)。音悪いし、Michaelのイスがギシギシいう音も入ってたりしたんですけど「まあ……しょうがないからいっか」みたいな(笑)。基本的に台本無しでやってるから、録り直しができないんですよね。そうだ、台本は作らない、編集はしない、演技しない、無理矢理にテンション上げたりしないとかっていうのは、いちばん最初に決めておいたことなんです。
──ニュースはおふたりが持ち寄るんですか?
だいたいひとり6個ずつとか選んで、そこから3つずつに絞ります。基本的に私が最初に読んでるものは私が選んだニュースで、Michaelが最初に読んでるのは、彼が選んだやつなんです。
──そうだったんですね。わりとセクシャルなテーマも多くチョイスされてますが、あれは……。
いやー(笑)。基本的には、お互いが面白いと思ったニュースを選ぶ感じなので……みんなが何を面白いと思うかっていうのを考えだすと、たぶん変になっちゃうっていうか。もう自己中に、自分たちが面白いと思ったニュースを選ぶって感じです。基本的には直感で。「あ、なんだこれ?」っていうのを(笑)。あとやっぱり私とMichaelで個人的に興味があるものっていうのがあって。Michaelだと宇宙の話とか、最新科学とか、ロボットとかなんですけど、私はけっこう社会issueに興味があって。
──ソースはどういうものを当たっているんですか。
普通に“ABC NEWS”とか、そういうニュース系のサイトとかを。ニュースって、ひとつひとつのメディアで見るとけっこう短いんですよ。あんまり詳細に触れてないし。特に翻訳記事だとかなり端折られちゃったりするから、なるべくたくさんソースを見て、それをつぎはぎして、まとめたものを紹介するようにしてますね。
──裁判記録を調べたりもされてるじゃないですか。パジャマの上から男性器を噛み切った人の話とか。
気になっちゃうんですよね(笑)。押尾学さんの公判記録とかも全部読んで。気になりすぎて。面白いんですよやっぱり。裁判ケースは面白い。
──番組はバイリンガル形式ですけど、普段はMichaelとは英語で話されるんですか?
普段は99%英語です。このバイリンガル会話形式って、実はかなり不自然なものじゃないですか。けっこう慣れるまで大変で……いまも大変なんですけど(笑)。なのでヒートアップすると英語が出ちゃって、途中で「あ、やばい」と思って日本語に切り替えるんですけど。
──番組内でふたりとも英語でディスカッションするときがあるのは、あえてじゃないんですね。
やっぱり英語で話されると、英語で考えちゃうので──いつもはそれを日本語に変換するんですけど、議論が白熱して「早く答えたい!」って思うと、どうしてもそのまま英語で言っちゃいますね。そういうときに日本語で話すとしても、いったん英語で考えたことを日本語に変換しなきゃいけないから、日本語がなおさらへたくそになるっていう(笑)。ただ、Michaelが言ってることを訳すのはやりたくないんですよ。Michaelが言ってることがわからない人でも、私の日本語のリアクションを聞くとなんとなくわかるっていうのが、もともとの目的だったので……っていうのは一応なんとなくですけど(笑)、でもそこは意識してます。
──いわゆる「英会話の番組」として、考えている部分もありますか?
「英語を教える」っていうつもりはまったくなくって──単語の説明とかまったくしないのはそういうことなんですけど、ふたりとも英語の先生の資格があるわけじゃないので、ちゃんと教えられるわけじゃないし。……大学生のときにGabaで英語の先生のバイトをしたことがあるんですけど、でもまあ、あんまり向いてないんです(笑)。教えるっていうのは、あんまり好きじゃない。変にテンション上げなきゃいけないし(笑)。英語っていっても、ただの言語のひとつだから、耳が慣れてくればそんなに怖いものじゃないっていうのだけ、わかってくれればなと思うんです。あとMichaelがどっかのインタビューで言ってたんですけど、英語の定型を覚えたところで、実際の会話でそんなに使われないし、だから「どういうふうに英語で言うか」よりも、「どういうふうに英語で考えるか」のほうが大事だと。この番組を聞きながら、そういう部分を感じ取ってもらえればなって──Michaelが言ってました(笑)。あとは、お互い素のリアクションを出したいから、打ち合わせも最小限しかしないようにして。
──意見が食い違って、ヒートアップする場面もよくあって。
お互い負けず嫌いだから……バレてると思いますけど(笑)。普段もけんかとかよくするし、いろんなissueがあって、そのなかでふたりの意見が違うこともよくある。そこで自分の持ってる情報が少ないと負けるから、いろいろいろネットで調べたり(笑)。メールとかでもそういう議論になるんですよ。だから調べつつ、打って、みたいな。何やってるかわからないですけど(笑)。
──どういう議論をされるんでしょう。
古代宇宙人の話とか、ピラミッドは本当は誰が建てたのかとかっていう……結論の出ない話を(笑)。そういうときはメールもチャット状態で、延々4、5時間もやってたらソフトバンクからメール止められちゃった。スパム扱いになってMichaelにだけ送れなくなった(笑)。そんな感じで、基本Michaelと話をしない日はないんじゃないかな。
──話題も議論も尽きない。
必ずしも意見が合わないからこそ、いつまでも話せるんでしょうね。それにMichaelは日本で育ってるけどインター(ナショナルスクール)に通ってたから、外国人目線の部分もある。私はずっと日本で育ってるから日本人目線の部分もある。Podcastでもその違いをそのまま丸出しにしてるっていうか(笑)。番組として無理にまとめなくてもね? 別に意見が違ってもいいじゃん、っていう感じで。
◎日本のことは、大好き
──Michaelは日本育ちなんですね。
日本育ち。お父さんがアメリカ人、お母さんが日本人で。でも、インターにもよるんですけど、Michaelが行ってたところは日本語が必須じゃなかったり、カリキュラムも完全にアメリカのだし、先生も外国人がほとんどだし、校内のカルチャーもほんとにアメリカ! っていう感じなので。だからけっこういるんですよ。日本生まれ日本育ちだけど、インターに行ったから日本語全然わかんないとか、考え方とかも日本人とは全然違うっていう人も。
──Mamiさんは、Michaelに日本のよさを力説されることも多いですよね。
海外に行けばいくほど──もちろん海外のよさもあるんですけど、日本ってやっぱりいいなあって思って。だけど日本人って謙虚だから謙遜しちゃって、日本のいいところをあんまりアピールできてないというか。政府もそうですけど。それだとちょっともったいないなあっていつも思ってるから、Podcastでもそれが出ちゃってるかも(笑)。
──Mamiさんの思う日本のよさとはなんでしょう。
やっぱり、まず人ですかね。安全っていうところにも関係すると思うんですけど、基本的に他人をだましてやろうとか、お金をふんだくろうみたいなところが、もともとないじゃないですか。財布を落としても返ってくるとか──滝川クリステルさんみたいなことですけど(笑)。でもそれはまさに、日本にしかないいいところだし。それにPodcastやっててすごく思うのは、TwitterやFacebookのコメントでもみんな本当に丁寧で。オンラインですらも礼儀正しいっていう。街もきれいだし。
──海外に移住したいとかはあまり思わないんですか?
そう思うときもあるんですけど、やっぱり日本はごはんもおいしいし。ごはんがこんなにおいしい国ってほかにないですよね。和食が大好きなんですよ。玄米ばっかり食べます。納豆だけは食べられないんですけどね。あと和菓子も好きで……いっつもドラ焼きとか食べてる(笑)。あと見た目もかわいいじゃないですか。ねりきりとか。温泉も好きだし、あと私、岩井俊二監督の『花とアリス』が好きなんですけど、それ見ても「ああ、日本って美しいなあ」って。以前は休みがとれたらすぐヨーロッパかどこかに旅行に行ってたんですけど、国内も回ってみたいなあって最近は思いますね。京都に行ったときはテンションが上がりました。
──Podcastは世界中どこでも聞けるから、全国からフィードバックがありますよね。
そう、日本全国に聞いてくれてる人がいて。その地方ならではの写真を送ってくれたりするんですよ。それにたとえば過疎地の話をしたら、実際にそこに住んでる人がコメントくれたりとか、捕鯨の話をすれば、捕鯨の町に住んでる人からフィードバックをもらえたりして、自分たちもより勉強になるっていうのもあります。そういう、普通に暮らしてたら聞けない方々の声も届くので、本当にありがたいですね。
──一般のメディアだったら、たとえば捕鯨なんかでも「こういうアプローチはやめておこう」みたいな方向付けが入ったりすると思うんですよ。でも「バイリンガルニュース」はかなり自由で、率直に意見も言いつつ、同時に自然な配慮も行き届いてるというのがすごいと思って。
わ、うれしい! そうですね、でもやっぱり聞く人が増えれば増えるほど、何かを言ったことによって不快に思う人はいるわけで。こっちがまったく思ってないことでも違うふうに受け取られることもあるんですよね。それはまあ仕方のないことだし。だからなるべく不快な思いをさせないようにしつつ──ただ、スポンサーが付いてないからなんでも言えるっていうのも、うちのいちばんの売りで。捕鯨の話でいうと“The Cove”っていうドキュメント映画はかなり有名じゃないですか。でもMichaelはたぶん「え、そこ行く?」って思ったと思うんですよ(笑)。でもそういうのも言えちゃうっていうのは、いいとこなんじゃないかなって思う。
──普段の生活でも、誰かに迷惑がかかることじゃなければ、本来なんでも遠慮なく言ったりやったりしていいはずなのに、日本ではそうでもないことも多いでしょう。
確かに。うちのルームメイトは帰国子女で、小学校何年生かのときに日本に帰ってきたんですけど、腕時計をしていたら「あ、腕時計なんかしちゃって、いけないんだー」って言われて。それがそんなに悪いことだっていうのが、どうしても理解できなかったっていう話をしてて。
──ありますね。
日本だとそこで疑問を持たないっていうか、疑問を持ったとしても「なんで?」とか「どうして?」っていうのをあんまり言わないでしょう。「どうして学校に腕時計をしてきちゃいけないんですか?」って聞いても、先生も多分答えられないし。あんまり言うと反抗してると思われちゃう。日本人同士が話すときも「なんでそう思うの?」っていうのは、あんまり聞かないから──
──察することですませちゃう。
それはもちろんいい面もあると思うんですけど、アメリカとかにずっといて日本に来た人は引っ掛かっちゃうところなんですよね。私とMichaelはお互い「なんでそう思うの?」ってずけずけ言うし、自分から「私はこう思う、なぜなら」っていうのを言うじゃないですか。Twitterとか見てると、「そこが新鮮だ」って言ってくれる人もいて。だから会社に勤めてたときも──外資だけどけっこうドメスティックな会社にいた頃は、仕事が終わってもみんながオフィスを出るまで帰っちゃだめだ、とかって言われるんですよ。するとやっぱり最初のリアクションとして「え、なんで?」ってなるじゃないですか(笑)。でも暗黙の了解だし、上の人も理由を説明しないっていう。そこは不思議に思うところで。
◎「バイリンガルニュース」のこれから
──さて「バイリンガルニュース」に関して、今後の目標はありますか。
やっぱり、より多くの人に聞いてもらいたい。そのために、自分たちが面白いと思えることのなかで、いろんなことをやっていきたいとは思っていて。ゲストを呼ぶ特別編なんかもそうだし、Tシャツを作ったりとか、ちょいちょい新しいことを出していって、引き続き面白いと思ってもらえたらいいなあって。
──運営費を捻出するのも大変なんじゃないですか?
初期投資の赤字分はTシャツでなんとかなったんですけど、今後運営していくのにもお金は掛かるし、あと週に2回これやってるんで、その間仕事ができないというのもけっこうダメージ大きくて。でも「時間もないし、お金もなくなったからやめます」っていうことにはならないように、かといってスポンサーについてもらうと自由度がなくなっちゃうし、CMが入っても自分だったら飛ばしちゃうし(笑)。なんとかsustainableにやっていくための方法を考えているところです。
──来てほしいゲストの方はいるんですか。
こないだMatt Cabに出てもらったんですけど、有名な人にももっと出てもらえないかなって思っていて。あと男性が続いてるから女性にも出てほしい。ほんとは。いっつも心細いから。
──番組上、バイリンガルであることは必須条件なんですよね。
そうなんです。それと関係なく言っちゃうと、私、マツコ・デラックスさんがすごい好きなんですよ。正直に言いたいことを言っている。けど、番組のこともあるから本当に言っちゃいけないことはちゃんとわかってるわけじゃないですか。それは、すごく頭がよくないとできないし、いい人なんだろうなって、勝手に(笑)。すごい好きです。
──嘘をつかない感じはありますよね。
私とMichaelがやってるのも、聞いてる人には嘘をつかない……さっきも言いましたけど、そのまんまを出すっていうのを目指してるので。それをおっきいメディアでやれてる人を見ると、ああ、すごいなあって思う。
──番組を聞いていると、Mamiさんに正義感の強さを感じることがあります。曲がったことは嫌いというか。
正義感! あー……やっぱりPRの仕事をしてると、いろいろ見えるわけじゃないですか。世の中曲がったことがいっぱいあって、それはしかたないというのもわかってるからこそ、ちょっとでも変えていけるところがあるなら、どうにかなんないかなとは思ってるんですけれど。
──そういう違和感はあるわけですね。
私にとって当たり前のことが、けっこうみんなにとってはそうでもない……簡単なところでいうとJUNGLE(アンダーヘアの処理問題)とかですけど(笑)、簡単じゃないところだと、たとえばそれこそサービス残業とか。それはしかたのないことだと思われてるけど、本当にそうなのかどうか。自分がPodcastやる前は、有名人とかを見て、「こんなにパワーがあるし、声を聞いてもらえるんだから、もっと大事なことを言えばいいのに」と思うことがよくあって。だからいま、せっかくこうやって何万人とか聞いてもらってるから、ちょっとでも何かのきっかけになればいいなと思ってます。
──社会issueに興味があると、先ほども言われてましたね。
たとえばInstagramとかソーシャルメディアを見てると、がんばりすぎて摂食障害になっている女の子がたくさんいて。海外ではそういう問題もよく取り上げられるんですけど、日本だと拒食症が原因で死んじゃった子の話とか、そういう究極な例が多くって。そこまではいかなくても苦しんでる子はたぶんいっぱいいると思うし。私もけっこうストレス掛かると、すごい過食したりとかあって。摂食障害とまでは言えなくても、女の子ってホルモンの関係でそういうのがあるじゃないですか。生理前に食べ過ぎるとか。そういうのをちゃんと科学的な裏付けも込みで説明すれば、ずいぶん楽になると思うんですよね。
──それは絶対あると思います。
前に摂食障害の話をしたときに、実際にそれで苦しんでる子から、前向きな気持ちになれたっていうメッセージをもらって。そうすると、ああ、番組やっててよかったなって。あとたとえば、女の子ってセックスしちゃうと、相手のことを好きになっちゃうっていうじゃないですか。それも普通に科学で説明できることなんですよ。セックスするとOxytocinとか、そういう親密に感じるケミカルが脳の中に出るから好きって勘違いしちゃうけど、それは一時的な作用であって。でもそれを女の子は知らないから、悩むわけでしょう。ろくでもない相手であっても、「好きになっちゃった。どうしよう……」って。でもそういうのがわかると、無駄に苦しむことはなくなるんじゃないかと思って。だいたい私、友達に恋愛相談されても「そんなのやめちゃいなよ!」とか「つぎつぎ!」とかすぐに言っちゃうから(笑)。
──Mamiさんも恋愛で苦しむことはあったんですか?
いや、苦しむ前に終わらせちゃう(笑)。なんでも、めんどくさいのがいやなんですよ。めんどくさい人も嫌いだし、めんどくさいことも嫌いだし。
──めんどくさい人と付き合ったことがあるんですか。
あります(キッパリ)。でもすぐ別れる。
──それは一時の気の迷いで。
そうですね。何考えてたんだろう(笑)。
──でも確かにメディアが、そういうissueをきちんと取り上げることで、変わってくることもありますよね。
やっぱりティーンエイジャーとか若い子に対するメディアのメッセージが、海外と日本で全然違うんですね。日本だと大学生くらいまで、けっこう子供扱いしちゃう。海外だと──たとえば雑誌で“Seventeen”ってあるじゃないですか。アメリカにもあるんですけど、中身がぜんぜん違うんですね。海外だとファッション以外にissueのページが絶対あって、たとえば妹を飲酒運転で亡くしてしまった子の話だったり、彼氏に暴力を振るわれているっていうissueに対しての真面目な記事だったり、そういうセクションがいっぱいあるんですよ。若い子でもそういうのを見る機会がいっぱいあって。MTVみたいなテレビでも、AIDSの日に一日中AIDSの特集をしたりとか。若者が見やすいように、同年代のAIDSの人たちを出してきて、話してもらったりとか。でも日本では、そういうのはみんな興味ないだろうっていうメディアのassumptionがあって……。そうすると、もともと興味があったかもしれなくても、触れることなく大人になっちゃうのかなあと思って。
──そういうメディアの固定観念というか、決めつけがある。
前から思ってたのが、メディアもそうだし、企業とかもそうなんですけど、みんな英語に興味ないだろうと思ってるじゃないですか。こんなに英語を勉強している人がいるにも関わらず。だから映画も全部吹き替えちゃうし、海外の番組も日本語にしてから流す。たとえばアジアのほかの国に行くと、「なんとかチャンネルアジア」っていうのがあるわけでしょう。そこで“American Idol”みたいなかんじの、アジアの女の子たちが参加する歌の番組もあって、そこに日本人の子も出て、上手じゃないけど英語で話したりしてるんですよ。でもそういうのって日本で全然知られてないし応援もされてないんですよね。
──それは基本、英語の番組なんですね。
アジアの中でもやっぱり共通言語は英語だから、ほかの国の人は観てる。でも日本だけちょっと取り残されてるっていうか。なんかそれって、みんなが選択したことなのか、メディアが選択したことなのかわかんないけど。そんなに英語聞きたくないのかなあって。でもこのPodcastをやって、これだけ聞いてくれてるってことは、案外そうでもないんじゃないか。だからどっかの業界の人たちが、バイリンガルニュースが1位になってるのを見て、「あー全部日本語に直さなくてもいいんだ」って思ってくれないかなあって、思ってるんですけど(笑)。Twitterでも「Michaelが何言ってるかわからないけど聞いてます」みたいに言ってくれる人もけっこういるんで。聞いてるうちにやっぱり耳は慣れると思うし。
──そうですよね。慣れることが重要で。
日本って真面目で、そこがいいところではあるんだけど、英語を勉強するにも真面目すぎちゃって、英語の本読むにしても一語一語全部辞書引いたりするでしょう。そりゃ嫌になるに決まってると思うんですよ。だけどタイとかベトナムに行くと、そのへんの道の、全然教育受けてない人たちもペラペラしゃべってたりするから。英語はただのツールであって、ゴールではないっていう。だからそんなに真面目にやらなくても……Podcast聞いてくれてる人で、「メモを取りながら聞いてます」ってたまに言われるんですけど、えー、セックスの話なんかもメモとってるのかなと思って(笑)。
──そういえばMamiさんが男の“Balls”を蹴ってみたいって言ったときに、Michaelが「スーパー・ドS」ってつぶやいたのがおかしかったんですけど……蹴ってみたいんですか。
蹴ってみたいです(キッパリ)。蹴れるもんなら。蹴ったことないから(笑)。でもその話をしたら、風俗嬢の女の子からメッセージが来て、「自分はそういうサービスをやっている」と。実際に“タマ”を蹴るサービスをやっていて、楽しいですよって。サイトのリンクとかもわざわざ送ってくれて、楽しかった(笑)。……いやでも、こっちは向こうのことを知らなくても、向こうはこっちのことを知ってるっていうのが、やっぱり不思議で。ほんとにみんなフレンドリーで、ああ、人間ってこんなに優しかったんだって思う。人間への希望がわきました(笑)。
──それは実感なんですね。
ほんとに。こんなにみんな優しいかと思って。Podcastで新しいエピソードをリリースするたびに、みんなTwitterとかですぐコメントくれるんですけど、毎回ちょっとどきどきするんですね。「がっかりした」とか言われたらどうしよう……とか。Michaelは落ち着いてるからあんまり気にしてないんですけど、私はけっこうビビリなんで……実は打たれ弱いから。iTunesのReviewでも星いっぱいくれるし。なんでこんな、みんな優しいかなあって。本当にありがたいです。
(おわり)
取材・構成 堅田浩二、浅井愛
取材・構成 堅田浩二、浅井愛
2013/10/24 更新