
都知事選、じゃなくて、このおふたりなのに今日はなんと“恋”のお話。
バレンタイン特別企画、田原総一朗と春香クリスティーンが“恋バナ”まじ語り。
そして背中を押された春香さんが……初恋、そして失恋!?
体験したての「後日談」まで、一挙大公開!
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◎“理想の男性”が田原総一朗になったわけ
田原 今日はお会いできるのを楽しみにしていました。春香さん、僕のファンだと言ってくれているんだって? 嬉しいねえ。
春香 はい。あこがれの田原さんとお話しできるということで、とても緊張しています。
田原 年齢は春香さんのお父さん、いや、おじいさんに近いでしょう(笑)。なんで僕なのか、今日はそのあたりをぜひ、お聞きしたい。まず、その前に、日本に来られた経緯からうかがいましょうか。
春香 日本の芸能界にあこがれて、16歳のときにスイスから単身、日本の高校に編入してきました。父は日本人、母はスイス人です。
田原 そう、それで日本語が上手なんですね。
春香 ありがとうございます。母は日本語を話せなかったので、父との会話で覚えました。でも、父はスイス人と結婚したのに、ドイツ語を話せないんです。
田原 えっ、お父さん、ドイツ語を話せないの? なら、お父さんとお母さんは、何語で会話をするの?
春香 英語です。ですから、家族の共通言語がなかった……おかしな家族でしょう(笑)。
田原 いやいや、だから語学が堪能なんだね。でも、なんで日本の芸能界だったの?
春香 小さいころから、どういうわけかスイスに馴染めなくて。もちろん、スイスは自然が豊かで綺麗な所ですが、刺激もあまりなく、私だけ浮いている感じでした。そんなとき、衛星放送でやっていた日本テレビの「笑点」を見て、“わっ、楽しそうな世界”と思ったんです。
田原 「笑点」って、あの落語番組の? 日本語の放送でしょう、理解できたの?
春香 初めて見たのは小学校の高学年くらいだったんですが、もちろん、最初はわからなかったです。
田原 小学生!? 時事問題もあったりして、とにかく日本の文化や世情を知らないと、オチも理解できないしょう。とても難しいと思うんだけど。
春香 はい。最初は……でも、わからないなりに、色とりどりの着物や座布団があって楽しそうだなとか、お客さんが笑うのを見てつられて笑ってました。
田原 そう、お題の出来、不出来によって座布団をもらったり、没収されたりね。
春香 初めは座布団がなんで増えたり、減らされたりするのかもわからなかったんですが、毎週見ているうちに大喜利のルールがわかってきて、完全にハマりました(笑)。

田原 ハマった……つまり、笑点を見て、こういう世界に入りたいと?
春香 はい。日本のテレビって、笑いがあって、楽しそうでいいなあって。
田原 でも、なんでスイスでなくて、日本のテレビなの?
春香 スイスのテレビって、正直、あまり面白くないんです。出演者も、司会と歌手、役者さん、一般の人ぐらいで、日本でいうタレントさんもいないし、雛壇もないんです。だけど、日本ではいろんなキャラのタレントさんがいて、笑わせるようなテロップもドーンと出たり、内容も濃くてテンポも早くて、とにかく面白い。まさにバラエティなんです。
田原 そうね。日本のテレビはものすごくサービス精神にあふれていて、なんとかお客さんにわかってもらおう、笑ってもらおうって懸命にやってる。
春香 そうなんです! 情報番組もいろんなボードを使って説明してくれたり、そういうところに惹かれて、この世界に入ってみたいと。
田原 それで日本に来ちゃったわけ? ご両親に反対されたでしょう。
春香 大反対でした。でも、私の決意が固くて……。必死に勉強して、父が出した条件の学校の成績を下げずに、TOEIC、TOEFL、ドイツ語、漢字検定、日本語能力試験をすべて1年以内にクリアして、許可をもらったんです。おかげで、日本へは高校2年の途中から編入することができました。
田原 スイスの高校と日本の高校では、ずいぶん違ったでしょう。
春香 全然違いましたね。まず、スイスの高校って、みんな普通に意見を言ったり、質問したりして手を挙げるのに、日本では、手を挙げないのが普通なんですね。
田原 そうね、日本では、あまり手を挙げないね。
春香 「笑点」のイメージがあったので、冗談は言わないまでも、手を挙げて、意見を言ったり、質問したりするのが活発なのかと思ったのですが、先生が一方的にずっとしゃべっている……。
田原 なぜかと言うと、日本の教育は、正解のある問題を解くことを教えているから。正解しか教えないわけだから、生徒も間違った意見は言えないと思って手を挙げないし、異なる意見や疑問もぶつけない。そんな授業、全然、面白くないよね。
春香 正直、ショックでした。そこで思い出したのが、田原さんの著書に書いてあった、先生を質問攻めにして困らせた話です。
◎「ズバリ訊く」からかっこいい
田原 ちょっと待って、高校生のときに、もう僕の本を読んでいた?
春香 そうです。「朝まで生テレビ」も拝見していました。
田原 すごい! 僕はどんどん質問するので、日本ではイメージがあんまりよくないんだけど(笑)……僕のどこに興味を持ったの?

春香 質問して何が悪いんだっていう姿勢です。私は気になったことは、とことん突き詰めるタイプで、それが当たり前だと思って生きてきたんですが、日本では、その場の空気を壊しちゃいけないという独特の雰囲気があって、たとえ疑問があったとしても、みんな何も言わないんです。
田原 それは、場の空気を壊すことはあえて言わない、日本の悪しき風潮だね。世界では、日本人にしゃべらせるのと、インド人を黙らせるのがいちばん難しいと言われている。
春香 そうかも!(笑) 私は、疑問に思ったことはその場で訊いて納得しないと、思考が停止しちゃうようで、とても苦痛なんです。
田原 その気持ち、よくわかるよ。
春香 なぜ、疑問のままでいられるのでしょうか。
田原 さっき言ったように、正解を出す教育しか受けてこなかったからだと思う。国際会議で欧米人がどんどん異議を唱えるのに、日本人が積極的に発言しないのは、正解を言わないと恥ずかしいと思っているからだと思うね。だけど、世の中の問題には正解のないことがほとんどでしょう。
春香 おっしゃるとおりです。で、田原さんが「朝まで生テレビ」で出演者を質問攻めにしているのを見て、日本人でもこんな方がいるんだと、目が釘付けに。それで、いろいろ著書を読ませていただきました。最近だったら『逆風を追い風に変えた19人の底力』(青春出版社)とか……出てくる方のお話もそれぞれすごく魅力的でしたが、何より疑問に思ったらすぐに質問に行く田原さんの行動力と取材魂に感動しました。
田原 気に入った?(笑)
春香 はい。著書はもちろんですが、討論番組でタブーに踏み込む姿、一歩先を読んで、相手の本音を引き出す姿勢に惹かれました。
田原 ありがとう。だけど、なぜって訊くのは嫌われやすい。政治家なんか、みんな僕のことを嫌な奴だと思ってるよ。
春香 訊かれたくないところを突かれるからじゃないですか? 私も「なぜ、なぜ?」って訊きすぎて、同級生に「お願いだから訊かないで」って言われていました(笑)。
田原 僕もだね。今も「なんで?」ってばかり聞いてる(笑)。でも、芸能界では「なんで?」って言うと、周りに嫌がられるでしょう?
春香 はい。だから、雛壇に座るときは、なるべく訊かないようにしています(笑)。だけど、疑問に思うことを曖昧なままにしていると、本当の自分がわからなくなってしまうし、物事の本質がわからなくなるという思いがあるんです。日本では、その場の空気を読むことを大事にする。それを学ぶのは面白いのですが、読んでばかりいると、何も訊けなくなくなってしまう。
田原 日本のジャーナリストのなかには、こんなことを訊くのは相手に悪いという気持ちから、遠回しの質問をする人が多いけど、海外のジャーナリストは、そんなことおかまいなしに、はっきり訊くんです。とくに中国のジャーナリストなどは非常にストレートに質問してくる。日本人はその態度に面食らうようだけど、僕は彼らととても気が合うし、僕も遠慮せずに「弾圧されて亡命した陳光誠さん(編集部註:中国山東省出身の盲目の人権保護活動家。自宅で軟禁、迫害を受けていたが、2012年、北京のアメリカ大使館に逃げ込む)を、どう思う?」などと直球で質問する。
春香 田原さんはなぜ、そんなにズバリ訊けるのですか?
田原 本質に迫るのがジャーナリストでしょう。そこに切り込まなければジャーナリストとはいえない。相手を思いやるのは大切なことだけれど、口論になるくらい相手と真剣にぶつかり、本音で議論する、これが大事だと思う。僕は物事の本質は自分で確かめるしかないと思っている。僕はそれを子どものころ学んだ。春香さん、太平洋戦争って知ってる?
春香 はい。
田原 僕は、11歳で終戦を迎えたんだけど、それまでは軍国少年で、海軍兵学校に入って軍人になり、国のために死ぬのが役目だと思っていた。ところが、敗戦を境に聖戦と教えられてきた戦争が間違いに変わり、教師や新聞は言っていることを180度変えた。以来、常識はそのまま信じてはならないと思って生きてきた。常識を徹底的に疑うことがジャーナリストの仕事だと思うようになったきっかけはそんな子ども時代の経験にある。
春香 田原さんの目は好奇心にあふれていると思っていたんですが、お話をうかがって、その理由がわかりました。
田原 追及ばかりしているんで、僕は目つきが悪いと思っていたんだけど、自信もっていいかな(笑)。
春香 もちろんです! 私のなかでは理想の男性です。