小説にサウンドトラックはあり得るか 菊地成孔 第3回 J・S・バッハ 第3回 始まりの音楽家、J・S・バッハが求めるもの

小説の記憶が求める音を掬い上げ、想像のなかで戯れるという至福の試み。
三回目の今回は少し趣向を変えて、根源的なる音響世界を生み出した偉人、
J・S・バッハと響き合う“作家”を探す。


『平均律クラヴィーア曲集(第1集)』(J・S・バッハ)
長短24調による前奏曲とフーガからなる曲集。1722年に完成した。ベートーヴェンのピアノソナタとともに、音楽の旧約聖書と新約聖書にたとえられるほど基本的な作品集。現代に至るまで、名だたるピアニストは皆演奏を試みている。ここで紹介しているのはグレン・グールド演奏のもの。




『大佐に手紙は来ない』(ガブリエル・ガルシア=マルケス)
大佐が待ち焦がれているもの、それは退役軍人に支払われるはずの恩給だった。しかし、彼に届く“手紙”はない……。1961年にマルケスが三十代で発表した作品で、退役軍人だった自分の祖父をモデルに書いたともいわれる。『悪い時』(新潮社)所収。


菊地成孔(きくち・なるよし)

1963年、千葉県生まれ。音楽家、音楽講師、文筆家。84年にプロデビュー。その後、デートコースペンタゴン・ロイヤルガーデン、SPANK HAPPYなどのグループを主宰、現在は菊地成孔ダブ・セクステット、菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラールで活動中。著作デビューは03年『スペインの宇宙食』(現在小学館文庫)から。対象は音楽、映画、料理、服飾、格闘技と幅広い。 近著に『ユングのサウンドトラック』(イースト・プレス)、大谷能生との共著で『東京大学のアルバート・アイラー』(文春文庫)、『アフロ・ディズニー』(文藝春秋)など。
2010年9月には『アフロ・ディズニー2 MJ没後の世界』と、菊地成孔の00年代の音楽家としてのベストワークス「闘争のエチカ」(上下)も発売になった。