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高校卒業後実家の町工場を継いだ青野のもとへ、
高校退学後ヤクザに身を落とした住田が突然の訪問。
その理由とは…? スズキスズヒロの連載最終章。





銃声を削り出す(4)






















※画像クリックで拡大されます。











【作者より】

とある金属加工工場にインターンシップに行った時のことです。

工場内を案内してくれたベテラン工員(おそらく定年間近)の男性が、愛用の普通旋盤(「旋盤」については第3話参照)を愛着を持って撫でながら、「こいつは俺の戦友だ」と口元をにやりとさせて言いました。

「戦友」は相当の年季もので、工業高校によくある実習用モデルとは異なる、これまで見たことのない型式のものでした。

男性が工場に就職したのが18歳と仮定すると、「戦友」は実に40年もの間、ひたすらに鉄の塊を削り続けていることになります。そのせいか、いささかくたびれてるようにも見えました。

なるほど、この機械も男性と一緒に歳をとっているのだなと思いました。

そして男性は言いました。「こいつのクセはすべてわかってる。40年一緒だから。こいつとじゃないとできない仕事がたくさんある。」

ものづくりは「ものをわかるようになること」だと思います。

一見どれも同じように固くて冷たく見える金属でも、種類によってさまざまな性格やクセがあります。例えばステンレスは鉄より固いし、アルミは鉄より柔らかい。また、同じ鉄でもさまざまな種類にわかれていて、少しずつ硬さや延び易さなんかが違います。

金属を加工する際はその性格やクセに応じて、使う工具や刃物をあてる速度などを的確に選択する必要があります。

また、材料だけでなく、工作機械にも台の滑りやハンドルの遊びなど、固有の性格やクセのようなものがあり、その微妙な違いを体で覚えなければなりません。

腕の良い職人さんはそれらすべてを「わかる」事で、精度の高い技術に昇華させているのです。

その為には工作機械との長い付き合いが必要で、それはまるで人間どうしの付き合いのようです。このことは、前述のベテラン工員さんが鉄の塊である工作機械を「戦友」と称している点にも表れているのではないかと思います。


そして、僕は思いました。


つまり、ものづくりがわかれば人付き合いもうまくいくのではないか。

相手の性格やクセを理解し、それにあったアプローチを的確に判断する能力が身につくのではないか。


ものづくりをすれば、人付き合いがうまくいく。人付き合いがうまくいけば、些細な争いがなくなる。些細な争いがなくなれば国どうしの戦争もなくなる(飛躍)。


さあ、みなさん、ものづくりを始めましょう!


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「今回のタイトルロゴは、高倉健のヤクザ映画みたいな書き文字がいいなあ、でも、自分じゃ書けないなあ」と思っていたところ、中学時代の同級生で習字が上手い「マツバラくん(現在は九州在住)」のことを思い出しました。

僕は早速、共通の友人を介してマツバラくんに連絡をとりました。

成人式で会って以来、実に5年ぶりです。あまりに突然のことにマツバラくんは、「5年も音沙汰がなかったのに急に連絡してくるなんて、もしかして布団でも売りつけられるんじゃないか!?」などと思ったに違いありません。

違うんだ、マツバラ、俺は変なビジネスにハマった訳じゃない、かっこいいロゴを書いて欲しいんだ!

急なお願いにも関わらず、マツバラくんは快く引き受けてくれ、しばらくすると九州から素晴らしい文字が送られてきました。


スズキスズヒロ

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スズキスズヒロ先生の次回作をお楽しみに!



2019/05/23更新
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スズキスズヒロ(すずきすずひろ)

1992年、仙台市生まれで在住。過去作は全てmatgrosso参照。
Twitter:@suzuhirosuzuki