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Lab:040 東京大学 染谷・関谷研究室




「極薄電子回路が、人と機会の距離を縮める」


 染谷先生の研究いかがだったでしょうか。これまでにっぽんスゴッ研究所では、ソフトやアプリケーション、システムを作っていくという研究を多く紹介してきましたが、今回紹介するのは、そのベースとなる「素材」の研究をされている研究室です。
「有機EL」という言葉を、最近よく聞かれると思います。テレビなどのディスプレイに使われている新しい技術で、これまでの液晶でできたディスプレイよりもはるかに薄く、省電力に、しかも美しくできるという特徴があります。
 染谷先生が研究してらっしゃるのは、そういった有機ELを含めた電子回路をさらに薄く、柔らかいものにするというものです。

 トランジスタ・集積回路の基本的な役割は、電流を流す(ON)、流さない(OFF)と切り替えて、コンピュータが動くための0と1の信号を出すことです。
 従来のトランジスタは、シリコン(珪素)やゲルマニウムなど、固い無機物を素材としていました。有機トランジスタとは、ルブレンやポリチオフェンなどの柔らかい有機素材を使った、薄くて折り曲げることができる電子回路のことです。

 今回、染谷先生のプロジェクトで開発されたのは、世界最薄、最軽量のセンサーシステム、有機発光素子、有機太陽電池です。どれも曲面などにフィットさせて使うことができます。
 当初は、ロボットの皮膚を作る、ロボットに皮膚感覚を与えるという目的でスタートした研究だと先生はおっしゃっていましたが、現在は、人体に寄り添うエレクトロニクスの研究へと変わってきているのだそうです。ロボットの形状に合わせて曲げられるというレベルから、人体のもつ複雑な形状や、動きにも対応できるというレベルにまで、その柔軟性を進化してきたということです。

 人が装着しても違和感がないということは、これまでにない情報のモニタリングを可能にします。病気や発作のなかには、前兆が現れるものが確認されており、そういった病気であれば、24時間人体にセンサーを装着することで、致命的な状況を回避できる可能性があるのです。
 これまでは病院の施設内でしか計れなかった数値が、日常生活のなかで計れるようになれば、もしかしると、発見できなかった治療方法が見つかる可能性もあるかもしれません。

 この驚異的に薄く柔軟な回路には、医療のほかにも、コンピュータをはじめとした電子機器に革新的な進化のキッカケになりえます。素材や基礎研究分野でのイノベーションは、幅広い分野に多大な影響を与えるのです。折り曲げられるテレビモニターといった側面に注目が集まる有機電子回路ですが、その可能性は私たちの想像を超えたところにまで広がっています。染谷先生の研究は、私たちの日常生活を、大きく変えることになるでしょう。

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